いつの間に、与える側になっていた~amazarashi/七号線ロストボーイズ | ライブハウスの最後尾より

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邦楽ロックをライブハウスの最後尾から見つめていきます。個人的な創作物の発表も行っていきます。

どうも( ^_^)/

 

天気予報を信じすぎる者です。

 

明らかに晴れてても傘は持つ、新しい傘を買う金は無い。

 

 

amazarashi

七号線ロストボーイズ

 

 

 

新潟から青森までを結ぶ国道七号線、青森のバンドamazarashiらしいタイトルです。

 

いかにもいつものamazarashiかと思いきや、新たな顔を見せてくれたちょっとしたサプライズなアルバムでした。

 

 

01.感情道路七号線

 

這いつくばる寸前とさえ思うサウンドの重心の低さです。

 

しかし倒れはしない、いつだってギリギリを踏ん張り続ける、音の体幹が強いです。

 

≪友よ、この歌を歌うな≫

 

これを言い切る魂の強靭さも凄まじいものを感じます。

 

02.火種

 

アップテンポながら熱っぽく血のような赤色を思わせるギターサウンドに耳が惹かれます。そして沸騰したバンドアンサンブルの鍋に差し水をするようにピアノの音色が丁度いい清涼を与えてくれます。

 

≪救うんじゃなく元に戻すんだ僕が≫

≪いっそ眩しく世界を焼く≫

 

「誰より苦しんだ日々がある君だからこそ出番があるんだよ」というメッセージを読み取りました。

 

自己否定、自虐、自分への呪いさえ力にせよと、人生という戦場に赴く人々を鼓舞する無血の扇動曲です。

 

 

03.境界線

 

最初に聴いたときは、あまりにも『86』の主題歌だなと思いましたが、妥協も諦めも選び抜いて決めたいという歌詞に、amazarashiが常にメッセージの射程にしてきた、生きながら社会の彼岸にいてしまっているような人に届く強度があります。

 

存在意義はいつだって自分以外

存在価値はいつだって自分の中

 

 

クールなリフ、ツーコーラス目から表情を変えるアレンジは見事です。

 

 

04.ロストボーイズ

 

待ちぼうけ君のバス、ガスト前

 

この歌詞を聴いた瞬間、歌になっていることを待っていた言葉たちが嬉しそうに踊っている光景を幻視しました。ヤバい粉モノなどやっていません。

 

 

 

寂寥と青春のロックバラード、十代学生の鬱屈を見事に描き出すリリックの筆致、『真夜中が少年を暴く』なんて天才の所業です。

 

 

05.間抜けなニムロド

 

ニムロドは旧約聖書に出てくる名前のようです。何をした人なのかはなんとなく分かるような分からないような。

 

大層な聖人の名前を使っていますが、ポストロック風のトラックに乗るのは何とも庶民的な歌詞です。

 

個人の物語と言い当て過ぎず、敢えて大掴みにして共感を誘うテクニックですかね、憎いです。

 

 

06.かつて焼け落ちた町

 

青森空襲を題材にしつつ、amazarashiお得意のアポカリプティックな世界観を出しつつ、生きるために失わなければいけなかったものという観念について深く掘り下げるテクニカルな歌です。

 

 

スクラップ&ビルドなどと言ってしまえば簡単すぎて不謹慎かもしれません。が、人生は何度も焼け野原から立ち上がれるのだと伝えるにはこれくらいのスケールが必要かもしれません。

 

 

07.アダプテッド

 

オリエンタルなギターとピアノのフレーズが耳心地良い、ダンサブルで上昇感のある四つ打ちの楽曲です。

 

ここまで聴いて、本当にいろいろ新しいことをしてきているなと感じてきましたが、この曲は決定版です。

 

途中、“とおりゃんせ”と“かごめかごめ”をサンプリング? している遊び心が特にお気に入りです。

 

 

08.戸山団地のレインボー

 

戸山団地を調べたらこんなサイトが真っ先に出てきました。青森市のニュータウン、なかなか綺麗な街にある戸建ての多い団地のようです。

 

 

そこで描かれる夢追い人の物語、まるで現代の宮沢賢治、虹の美しさに絆されたわけじゃないと言いつつ、それでも架かる虹に希望を感じてしまうのは人の性でしょうか。いいじゃないか、希望なんていくらあっても腐りません。

 

 

09.アオモリオルタナティブ

 

このタイトルのオルタナティブは、おそらくですが音楽ジャンルとしての『オルタナ』だと思われます。

 

歌詞から、微笑みが漏れるライブハウスあるあるが聴こえてきます。

 

アンプはマーシャルかオレンジ、トラブルは入力から順番に、ケーブルの断線かな? エフェクターの不具合かな? ギターの電池切れでした。みたいな風景が明瞭に浮かびます。

 

 

10. 1.0

 

アルバム『0.6』から始まった物語が一区切りついたような感慨の湧くタイトルです。やっと『1』になれたのだな、と我がことのように嬉しくなってしまいました。

 

 

 

『チ。』の主題歌でもあり、amazarashiの主題歌です。

 

息継ぎも置きざりにせよと言わんばかりな矢継ぎ早に畳みかけ叩き付けられる言葉たち、amazarashiの音楽は「熟読」の熟語がよく似合います。歌詞を聴き干す音楽です。

 

 

 

 

(琴線に触れた歌詞を引用しようとしたらぜんぶ書かなきゃいけなくなったのでやめにしたスペース)

 

 

 

 

なにかを許してくれるような淡々としたピアノのフレーズから浮き上がってくるような言葉たちを読んでいると、どうしようもなく泣けてきます。

 

メッセージが、ひたすらに与える側に立っているからでしょうか。amazarashiの音楽は「俺も負けた側の人間だ」という地平からスタートする歌だと思っていましたが、いつの間に、与えるミュージシャンになっていたようです。

 

 

11.空白の車窓から

 

最後は大人しく始まったと思ったらいつの間にやらメロコアが始まっていた爽やかなパンクロックソングです。

 

時計が止まってしまったような二年間も、時は当然止まりやしなくて、未来に続く空白の景色は、モヤがかった希望を蜃気楼のように見せ続けています。