どうも( ^_^)/
『Fairy gone』の話がしたい者です。
なので、始めます。
舞台は、動物に憑依する妖精が生息する大陸の東部イースタルド。
時代は、苛烈な統一戦争が起こり、統一ゼスキアが生まれた直後。
内容は、マフィアや反国家組織が扱う『違法妖精』を取り締まる組織・ドロテアの戦いと活躍。
なのですが。
このアニメ、2クールもやった割には地味です。
何しろ、話が戦後処理のさらに先。
不穏なテロリストやマフィア、怪しげな宗教組織の事件を
チマチマ潰していくだけなのです。
ちなみに、チマというマスコットキャラも登場します。
この作品を象徴する名前です。
小気味よいアクションシーン、ロックな劇中歌など、
ダークファンタジーとして爽快な部分は多いですが、
あくまでも舞台は平和になったあとの世界。
敢えて言ってしまえば、盛り上がらない。
何故なら、ドロテアの面々が、
必死に戦い、事件を未然に防ぐからです。
八話『舞台そでの笛吹き」にて。
統一ゼスキアの首相に恨みを持つテロリストに
「ゴルバーン(首相)を許せるかよ!」と激昂され、
主人公フリーは言います。
許せなくていいさ。ただ受け入れろ。
戦争は終わったんだ。
人殺しが正当に裁かれる。
良い時代だろ。
このセリフに、作品の魅力が詰まっています。
歴史には刻まれない英雄譚。
世界の平和を守る大切なお仕事。
いうなれば、戦後の世界の保守管理。
目立ってはダメなポジション。
ファインプレーをしない守備の選手です。
ゴールキーパーの前の前で、危険なボールを刈り取り続けるアンカー。
そんな人たちの奮闘記が、本当に面白いのか。
面白いんです。
盛り上がらないと書きましたが、前言撤回。
綺麗な比例直線を描いて盛り上がります。
特に、後半二十話からの四話は最高潮。
たとえ前半が70点だと評価されても、後半が170点。
バラバラに進行していた物語、登場人物、因縁。
すべてが一つに束なっていく。
この爽快感は「観てくれ」としか書けません。
ネタバレをしようとすれば夜が明けて夜になります。
時代が要請した物語だともいえます。
シナリオを書いた十文字青さんや鈴木健一監督が
どれほど企図したかは分かりません。
世界地図の半分が戦場になるようなデカい喧嘩が起こらず、
戦争とも呼べないテロや紛争が頻発する現代。
民主主義・資本主義、はては人類の存在そのものが、
いろいろ曲がり角、踊り場に来ている気がする昨今に、
敢えてぶつける人間賛歌です。
頭身の高い、リアルよりのキャラクターデザインは癖が無く、
それでいてファンタジックで、万人にお勧めできる絵です。
個人的に、虫のようにガチャガチャと動く多脚戦車がお気に入り。
キャラクターについても書きます。
主人公の一人、フリー・アンダーバーは、作風通りの地味めな設定。
変わった出自でもない。少々天然が覗く時もあるけど、常識人。
上司から信頼され、同僚からも慕われ、面倒見もいい男です。
成り行きとはいえ、神器のような妖精武器を受け継ぎ、
1クール目後半からはそれを駆使し、肝心な場面では中ボスをきっちり撃破する。
こちらも成り行き、かつ押しかけのように同僚になったヒロインにも、
決してベタベタせず、適度な距離を保ち、見守り続ける。
兄と妹のような、良い関係を作り上げています。
尖ったところの無い造形も、ジワジワと魅力を増すタイプの主人公です。
もう一人の主人公マーリア・ノエルは対照的。
特殊な出自。不遇な経歴。特別な能力。
三点激盛りでお届けする、悩めるヒロインです。
閉鎖的な村で“災いの子”と呼ばれ、
その通りに、家族や育ての親、仲間が自分を庇って死んでしまう。
常日頃からサバイバーズ・ギルトを抱えた彼女に、
仲間たちは言う。
『考えすぎだ』
と。
うん、ちょっとはしょり過ぎましたが、大体合ってます。
クリティカルな言葉を食らって、ハッとするというよりは、
大切な日常(ドロテアの仕事)を積み重ねて、
「自分を大切にしていいんだ」と気付いていきます。
十話『災いの子』にて。
同僚がまた自分を庇って殉職し、曇るマーリアは、
かつて世話になったマフィア宅に身を寄せる。
そこに、フリーたちがやってくる。
この回、シリアスぶってますが、
完全に『独立した娘と付き合ってる彼氏が、父親のところに挨拶に来た』
みたいな状況で、フリーの天然ぶりが大変笑えるので必見です。
とはいえ、
仲間の為なら身体を張ってマーリアを守る。
俺たちの為に、逃げ出さなくてもいいんだ。
と、決めるところは決めてきます。
この二人にはそれぞれ、かつての戦友と故郷の生き残りが
テロリストに堕してしまったという因縁があり、
そこを縦軸にしたストーリーも見どころです。
辿り着く結論は、至って普通というか、
「なんだかんだいって、これしかない」
黙って、歯を食いしばる類の泥臭いものです。
それがまたホッとさせるんです。
物語が導き出した正解。見事でした。
一週間待ちに待つ楽しみというのももちろんありましたが、
配信サイトで一気見するにも適した良作です。
とにかく、面白いので観てください。
