2017.8/1(Tue)~それでも世界が続くなら/消える世界と十日間 | ライブハウスの最後尾より

ライブハウスの最後尾より

邦楽ロックをライブハウスの最後尾から見つめていきます。個人的な創作物の発表も行っていきます。

どうも( ^_^)/

 

 

宇治金時を食べると夏だなと思う者です。

 

 

それでも世界が続くなら/消える世界と十日間

 

 

 

 

 

それでも世界が続くなら “本物”を歌うロック・ミュージックの挑戦(Skream! インタビュー記事)

 

 

前回のインタビュー程長くはないですが、このアルバムについて語るべきところを語り尽くしていると思います。

 

 

この記事を参考に、故人的、じゃなくて個人的な感想を書いていきます。

 

 

01.人間の屑

 

 

 

 

 

 

綺麗なんだけど浮世離れして怖い感じもある空(くう)のようなリバーブを効かせ切ったギターと、混沌の極み過ぎてむしろスッキリ聴ける轟音のノイズギターはすっかり代名詞です。

 

 

これはもちろん後者で、雑踏に紛れるように呟かれる「人間の屑」の一言が突き刺さります。

 

 

相変わらず優しい歌詞です。「君は汚れてない」ではなく「君は汚れていていい」というための、この露悪的なタイトルなのだと思います。

 

 

 

02.深夜学級

 

 

多分俺の音楽の聴き方がおかしいんだと思いますが、それでも世界が続くならに、そこまで既存の音楽のカウンターであるという感じは受けていません。

 

 

いや、インタビューにもある通り、フロントマンの篠さんは不器用なほど実直に『そんだけやればそりゃ売れるだろっていうほど野心的な奴だけが売れる邦楽の現状』に対して異議を唱えているんだろうなというのは分かります。

 

 

ただ、そういうことがどうでもよくなるほど、俺はこのバンドの声と曲に魅入られているんです。

 

 

つまり、この曲のサビのメロディラインが好き過ぎるという話です。篠さん特有の、重心がとても低いのに高音が抜ける―――例えるなら、地に伏しながら懸命に空に向かって突き抜けようとするボーカルに合ったメロディです。

 

 

最近、深夜学級聴いてないな。

 

 

03.就寝系

 

 

変換機能って偉大だと思いませんか。『就寝系』と打ったら『終身刑』と予測されて「ああ、そういうタイトルの意味か」と分かりました。

 

 

ファンクっぽいのに全然踊れる気がしないのが流石です(失礼)。定期的に片手一本で修行してきたDr.栗原さん(大分失礼)のドラムが光ります。

 

 

前回のシングルについてブログを書いたときに、ありがたいことにTwitterでスタッフの方が反応してくださり、その中に、「英詞は“自分らしさなんていつでも捨てられる”っていう、ただの意思表示だよ」と篠さんが話していたという箇所がありました。

 

 

この曲にも英詞が使われていて、さらに冒頭の歌詞が≪もう自分らしさとか捨てていい≫です。きっぱりと言い切っていますね。

 

 

04.正常

 

 

何かが間違っている、どこかが狂っているような気がしても、大なり小なりシステムに乗っかって生きているのなら受け入れなければいけないのかという思いはずっとあります。

 

 

「そんなにまでして生きていたいのか」は絶対的な禁句として設定されてしまっている以上、自分の内側に溜め込んでおくしかなかった気持ちが、こうして短い曲で見事に表現されていると、何か救われたような気分になります。

 

 

05.アラームと起床

 

 

メロ部分は4/4拍子が奇数小節で一塊を繰り返し、サビは偶数小節で一塊を繰り返すことで、ちょっと変拍子っぽい聴感のある曲。

 

 

≪戦争は嫌だって/勝てないから言ってんの/勝てるなら君だって≫

 

 

力も強くて喧嘩っ早くて血気盛んな、いわゆるジョック的な人間に生まれ育っていれば、果たしてこのバンドを好きになっていたでしょうか。生まれ変わったら確かめてみようかと思います。

 

 

 

06.かけがえ

 

 

認知不協和だとか公正世界仮説なんていったりしますが、良いことなんかしなくても幸せはやってくるし、悪いことなんかしなくても不幸が訪れるどうしようもない世界で、我々は生きています。

 

 

誰にでも誰かの代わりになるし、なれてしまう。本当に代替不可能な関係なんて、あり得ない。かけがえのある姿と立ち位置にいながら、かけがえのないものを求めてしまう矛盾を、嘘とつかず理屈をこねず矛盾のまま歌えてしまうのが、このバンドの強みです。

 

 

 

07.消える世界のイヴ

 

 

いわゆる、公共の利益=この世界に生きるすべての人の幸福の最大公約数を考えることは無駄ではないでしょうが、それを個人の人生に当てはめてしまってはいけません。

 

 

ましてや、「お前は相対的に見れば幸せな方なんだから悩むな」なんて言ってくる人間は、その人をただの数字や点としか見ていないことを公言しているわけですから、取り合ってはいけない。あとは、ここに書きました。

 

 

≪一緒に死んでみたい≫この歌詞が好きです。生きていくってことは死んでいくってことなんですね。

 

 

 

08.三分間の猶予

 

 

なかなかかっこいい音色のギターソロが良い。面白いのは、“三分間の猶予”というタイトルにもかかわらず、曲自体は三分も待ってくれないということです。

 

 

 

09.水の泡

 

 

“愛”も“夢”も“命”も、ことごとく経済の言葉になってしまって、別にそれらが本質的に空虚なものであることに不満はないのだけど、経済の言葉の中であたかもそれが中身の詰まったものであるかのように宣伝されるから、余計な白々しさや寒々しい思いをしなきゃいけなくなってしまう。

 

 

空虚を空虚のまま、矛盾を矛盾のまま、熱く声を張り上げるのは、ロックの言葉です。パンクの作法です。さぁ、愛を取り戻せ。

 

 

10.アダムの林檎

 

 

Adam's appleは喉仏のことらしいです。アダムが神に見咎められて慌てて飲み込んだ林檎を喉に詰まらせてできたのが喉仏だという。

 

 

怒られるのが分かっているから飲み込んだけれど、ばっちり証拠は残っているようです。これは、それでも世界が続くならから、全国のロックバンドたちへの檄文、ドギツいラブレターです。飲み込んだ本音は、丸見えだぞって。

 

 

 

11.僕がバンドを止めない理由

 

 

もう、歌じゃありませんね、音程を決めて喋っているほうが近い。メッセージソングじゃなくて、ただメッセージです。

 

 

留守番電話に入っているちょっと長めの、といったら長過ぎるしギター弾いてるけど、そういう感覚で聴けてしまいます。

 

 

同時に、この聴いている間続く心地よさは、とても音楽的です。

 

 

さて、こうして全曲聴き終わったので、もうこのブログは書き終えたのですが、上手く締める言葉が見つからなくて、数分文章を右往左往させていました。

 

 

でも、別に締まってなくてもいいはずです。バンドも、次のアルバムを作る意欲が強いみたいですし、世界も続いていくだろうし、その時まで、“締め”は持ち越しです。

 

 

 

 

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