全部、藤原基央の歌だった~BUMP OF CHICKEN コロニー/Hello,world! | ライブハウスの最後尾より

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どうも( ^_^)/


阿部サダヲミギーに結局慣れられなかった者です。


しかし寄生獣自体は主たるテーマは見失わず山崎監督らしいエンタメ作品に仕上がっていたと思います。


BUMP OF CHICKEN
 コロニー/Hello,world!




01.コロニー


混沌としたバンドサウンドに加工されたボーカルというBUMP OF CHICKENがまた一歩勇気ある進化と深化を果たした“パレード”からさらに踏み込んだバラード。


まず、歌が曲と共に始まって最初のサビが終わるまで楽器隊が音を鳴らさない。コードとシンセとパッドに優しく柔らかいボーカルが乗っているだけ。


俺は以前「バンプは藤くんのボーカルとアコギさえあれば成立する」と書きましたが、そうですらないところまで、ついにバンプは辿り着いたようです。



“パレード”で描かれたのは自分の身体が自分のものではなくなっていくような奇妙な感覚と、世界の認識が歪んでいく情景。


そこに当たり前にあった(と、思っていた)ものが無くなり≪パレードは続く 心だけが世界≫と、寄る辺を無くしそうになっても自分だけはここにいる、という確かな感触を、混沌と混濁を極めたサウンドと共に歌い上げていくという終わり方でした。


それに対して、今回の“コロニー”。曲調、歌い回しどれをとっても優しく、体温が感じられる楽曲となってはいますが、テーマは“パレード”から地続きです。


藤原基央という作詞家は決して自分の気持ちから離れてタイアップ先に“寄せる”歌を歌うタイプではありませんが、もともと原作のファンだったという『寄生獣』ということで気持ちが重なる部分があったのでしょう。

≪どこだろう 今痛んだのは≫
≪名前のない涙≫
≪世界は蜃気楼≫と、自分の“正体”が掴めなくなった心情が紡がれて、サビでははっきりと≪こんなに今生きているのに 嘘みたい≫と歌っている。


アルバム『RAY』以降、本当に色々な挑戦を続けてきたBUMP OF CHICKENのフロントマンとしての迷いとか苦しみみたいな感情をあなた=リスナーに委ねて「どうか聴き続けて欲しい」と言っているようにも思えました。うん、これはバンプの、藤原基央の歌です。





02.Hello,world!


これでも高校生の時はプログラミングを習っていました。


いかにも機械的な、打ち込む文字を一行でも一マスでも間違えただけでエラーをはじき出す融通の利かなさと、そのくせたまにどの教科書にも載っていないバグを噴出させる気まぐれさに7回くらいキレましたが、最初に出力した『Hello,world!(こんにちは世界)』という文字列は、何だかとても文学的というか、新たな未知への扉を開いたような感慨があって好きでした。結局二進数の世界を自分から広げることはなかったのですが。


さて、そんな意味を持つタイトルの“Hello,world!”はBUMP OF CHICKENのギターロックサイドが全開に吹き上がったアッパーチューン。どれくらいアッパーかというと、サビが二個もある!


何をどうしたってこの世界の中心に立ち続けなければいけない“僕ら”の業を軽やかに切り取った歌詞を切迫したメロディで聴かせるサビが終わったと思ったら、さらに壮大なサウンドで

≪ハロー どうも 僕はここ≫

と高らかに絶唱される。これにやられない人はいないでしょう。


ちょっと飛ばし過ぎましたね。メロから順番に聴きましょう。


不眠不休で働きづめな状態なのか、いきなり≪昨日どうやって帰った≫とグロッキー状態で始まる歌詞。死にそうだけど割と大丈夫、なんか恥ずかしい。やるべきこと(歌うこと)は忘れていてもやってしまう。そうしないと苦しいから。


主題歌となったアニメ『血界戦線』の主人公レオの毎週死にかけるギリギリな日常に照らし合わせてもいいけど、やっぱりこれも藤くんの歌ですね。


特に二回目のメロからはそれが顕著で、陳腐な言葉で言語化するのが憚られるほど胸をギュッと掴まれる歌詞が並びます。


歌全体の印象としては「どうしようもないくらい君は君でしかないし、君は君の物語の主人公で、君自身でしか君のことを救えず、そんな君は君がどう思おうと空っぽでも死んでもいない強い一人の人間なんだ」というメッセージを伝えられているような気がしました。


インタビューで藤くんは「物は言いようですよ」みたいな身も蓋もないことをおっしゃっていましたが、いや、それをここまで気持ち良く聴かせてくれるミュージシャンはなかなかいませんよ。


あと、『血界戦線』のアニメは松本理恵監督のセンス◎な最高に面白い作品なのでおすすめです