さらに五年後のflumpoolへ~flumpoolベストアルバム『MONUMENT』全曲感想①  | ライブハウスの最後尾より

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ここから、flumpoolの“物語”が語られていく~flumpool『MONUMENT』

どうも( ^_^)/


携帯にかかってきた電話になかなかでない者です。


知らない番号が出ると出たくないんですよね。今日は結果的に保険屋を四回もコールさせました。


それはおいておいて


flumpool
THE BEST 2008-2014『MONUMENT』
   全曲感想



曲名の上に印象に残ったところを一つ挙げた一口感想と、そのあとに長い感想を書くというスタイルを取りました。それでは順番に聴いていきます。



百田留衣さんから、十年後、大きく花咲かせるだろう彼らへのプレゼント

01.花になれ



Mr.Childrenに小林武史という“第五のメンバー”がいるように、flumpoolにも強力な“もう一人のflumpool”として百田留衣さんというプロデューサー及びアレンジャーがいます。(ライブでは高藤大樹さんが“第五のメンバー”としていてくれる。)


“labo”や“星に願いを”などが候補に挙がりつつ、「でもそれじゃあデビューできない」という判断の下で彼がflumpoolのために書き下ろした楽曲は、イントロの時点で既に『得体のしれない凄さ』が際立つ名曲です。


歌詞では『十年後の僕に捧げる』といって≪笑って泣いて歌って/花になれ≫と歌われます。


これは、百田さんからflumpoolの四人に向けたメッセージなんじゃないかと今でも思っていて、たとえ違うと言われてもそう思い込もうと決めていることで 笑


この記念すべきデビュー曲が提供曲であったのは、とてもドラマチックな必然だったといえるように、あと五年、『捧げられた自分たち』に報えるように歌い継いで行ってもらいたい曲です。



たった一度の≪会いたくて≫に心が震える

02.星に願いを


豪華なバンドアンサンブルと美しい旋律で綴られたアッパーチューン。


バンドが気持ちよくグルーブしているし、リズム隊のダンサブルな感じがノリの良さを引き出していますが、歌自体はとても切ない。


特にサビで≪会いたくて≫と一回だけ歌われるのが良い。ええ、マニアックですとも。


ここで≪会いたくて/会いたくて≫とリフレインしてしまうとこの歌が持っている悲しさや寂しさが減退してしまう。そして最後に≪会いたくて/会いたくて今会いたくて≫と畳みかける部分が弱くなり、希望を予感させるラストの効果が消えてしまう。


なんでこんなことを書くのかというと、これを聴いた当時、この歌詞の展開がとても新鮮だったんです。


いかにもリフレイン(同じメロディを繰り返すこと)しそうなワードを一回にとどめて行くという手法が珍しくて、一気にflumpoolというバンドが自分の中で無視できない存在になりました。


“花になれ”以降もバンド外のコンポーザーとの共作が多くて、ロックバンドとしての力量を測りかねていた時に『どんなもんじゃい!』とばかりに出されたシングルにやられました。




“どこにでも/どこかにいるあなた”に届く言葉を紡いだ渾身且つ意地の一曲

03.どんな世界にも愛はある



リリースされたのは2011年7月。震災の影響でツアーも延期を余儀なくされたあとの、アーティストとして何を表現するのかが問われる一曲。


いきなりサビを、隆太さんがアコギ一本で歌うという始まり方をします。その理由を少し考えました。


≪もう一人にさせはしない≫と歌うために、一対一で向き合う必要があると考えたのだと思います。リスナーと、歌詞を紡いで届ける山村隆太とがサシで向かい合う。この個人同士が向き合っていくというメッセージはその後の“Because... I am”にも通じます。


歌詞は普遍的でポジティブなメッセージが綴られ、ここに『どこかにいるしどこにでもいる誰か』に届ける使命を持ったポップミュージックを鳴らすバンドとしての“意地”を見ました。


あまりにもリアルな災厄を前に、ただヘラヘラと前向きで適当なことは歌えない、そしてこれまでのリスナーも、これから聴いてくれるリスナーも裏切らない歌を歌わなければならないという段階で、flumpoolは見事にそのハードルを乗り越えて見せました。


“渾身”且つ“意地”の一曲で、flumpoolが、より大きなバンドになりました。




軽やかさと強さが同居したドラマチックな歌

04.春風



軽やかにグルーブするバラードと思いながら、音は結構重厚でロックという、面白い曲です。


今こうやって聴いてみると、初期のこの曲でも、音に隙がありません。


最初から最後まできっちりと作りこまれた楽曲の強さを感じるし、それ以上に豪華に彩られたアレンジにバンドが負けていないのが強い。


春風は大きく強く吹く。“君”の面影を探して立ち竦んでいる歌詞は女々しいけど、曲とバンドは強いです。



このレベルの楽曲がカップリングになるという能力の高さを示した曲

05.君を連れて


空高く上昇するような軌道を描いて、ストンと落ちてくる印象のイントロから、どこか夏っぽいポップソングが始まっていきます。


ライブでも人気だし、ベストアルバムに入るのも納得なんですが、この曲自体はシングル『Answer』のカップリング曲。最初に聴いたときは両A面でも良かったんじゃないかと思った良曲です。


『めざましどようび』のテーマソングということで≪起き抜けのweekend ≫と、週末のダラッとした感じがよく出ています。




じりじりとした熱っぽさがよく表現された夏曲

06.微熱リフレイン


スネアを打ちっ放しのドラム、重低音部からあまり動かず細かく刻まれるベースも、ちょっと揺れるように歪んだギターも、全部が熱っぽくて夏っぽい。それを、清涼感のあるシンセと隆太さんのボーカルが冷却剤として作用して正に“微熱”が表現されている曲です。


“君を連れて”もそうですが、本当に優れたポップセンスを持ったバンドだと思います。

歌詞で描かれているひと夏の恋どころか、春夏秋冬問わず自室に引きこもってへたばっている芋虫みたいな俺ですら、こういう曲にワクワクさせられるのだから間違いない。



より高みを目指すタームへと突入したことを感じさせるMaydayとのコラボレーション

07.Belief~春を待つ君へ~



台湾出身のモンスターバンドMaydayとのコラボと言われても、なかなかピンときませんでしたが、台湾から帰ってきたflumpoolがなんだか『やられた』とでも言うようなグロッキーなテンションで戻ってきたのを見て、すごいバンドなんだなと認識しました。


で、ちょっと調べてみたら中国で20万人を動員し、ワールドツアーを行いニューヨークのMSGでのライブも成功しているということが分かり、ビビった 笑


日本で言ったらGLAYとラルクを足して二で割ったようなスーパーバンドに向かって行って、それでも堂々と自分たちで作った楽曲できっちり勝負できているのは頼もしい。


“Belief”とは“信じる・信念”という意味。Maydayにある意味で“やられ”て、より高いステージでやりたいという気持ちを高ぶらせつつ、自分たちが信じてやってきた音楽をぶつけていった名バラード。



狂気を内包し、激しく静と動を行き来するロックチューン

08.MW~Dear Mr.&Ms.ピカレスク~



以前、大阪で路上ライブをしていた時代のflumpool(当時はCube名義)の音源をファンの人から聴かせてもらったことがあって、その中にこの曲の元となった“月と街灯”というアコースティックソングがありました。


その時はただひたすらがむしゃらなアコロックという感じだったんですが、メジャーでリリースされたこの曲には“狂気”が込められました。


まず曲の構成が凄い。印象的で激しいイントロからさんざん盛り上げて静かな歌が始まり、サビでは徐々に熱を帯びて、二度目のリフレインで一気に爆発する。そしてそれだけで終わらずもう一山起こす。振れ幅が激しくて聴いていて飽きません。


歌詞も、それと直截的に分かる言葉は巧妙に紛らわしつつ、とても暴力的で、実は性的ですらあります。


まるで、スポンサーの影響で登場人物の同性愛描写を自粛せざるを得なくても何とか裏設定として残す意地を見せた映画『MW』のように、ただでは終わらないロックバンドとしての意思を感じる初期のターニングポイントとなる楽曲です。



これが、この曲に望まれていた形

09.labo


インディーズ時代からflumpoolの勝負曲として歌われていたクールなグルーブが特徴の四つ打ちダンスポップソング。


≪私が世の男性の最上級です≫と言い切る醒めた歌い方と、アウトロの変拍子が気持ち良いです。


手元の資料(先述したflumpoolをアマチュア時代から応援している人からの情報)では、この楽曲のデモテープがデビューの決め手になったそうです。


それほど大切な曲を、今回はRe-formatと題してEDM風にリアレンジ。この無機質な感じが、“labo”という楽曲にある世界とマッチしてとてもいいです。



バンドを新たなステージに押し上げる覚悟を感じた

10.two of us



この曲をリードトラックに据えた『Fantasia of Life Stripe』がリリースされる時、印象的なインタビュー記事が、ロキノンに載っていました。


「(野外フェスに出演した際に)正直、他のバンドに舐められていると思っている」


1stアルバムに、ホールクラスでの大々的な全国ワンマンツアーも経験し、バンドとしての自力と基礎体力もつけたという自信に裏打ちされていた言葉だったと思うし、そう“カマして”リリースした『Fantasia of Life Stripe』は、とても“巨大”な感じがしました。


アルバムの中で、今まさにポップバンドとして頂に上り詰めようとするバンドのヒリヒリする強さを最も感じたのがこの軽やかで爽やかなラブソングである“Two of us”。


俺たちはこれで行く、というポップモンスターになる覚悟を決めた感覚を伝えられました。



儚い一瞬(ワンシーン)を強く生きるflumpoolヒストリーの、一つの集大成

11.強く儚く



タイトル通りの強さと、五年間続けられてきたflumpoolらしい少しネガティブなシリアスさが存分に出ている曲。


迷いや苦しみが前面に出た歌詞に、一筋縄ではいかなかったバンドヒストリーが見え隠れします。


平坦でないからこそ映えるのはアーティストもメロディも同じです。キレのいいストリングスとキメを意識したバンドアンサンブル、メリハリの効いたアレンジと≪“サヨナラ”≫と繰り返したのちに≪もう一度≫とくるラストのサビの展開が感動的です。


“花になれ”の≪笑って泣いて歌って≫という部分をインスパイアしたのだろう最初の歌詞に≪悔やんだ/愛した≫と付け加えたのは、きっとまだ道半ばだからで、一瞬を愛し、愛せるように≪泣いて笑った日々≫は続いていく。それはとても微かで確かな希望です。



自分たちの目指す夢を信じる、というより、信じたい、という想いが強く見える最初期の名曲

12.Over the rain~ひかりの橋~



笑いました。


初回盤の特典DVDに収録されていた“Over the rain~ひかりの橋~”のPVの話です。


ドールメイクを施された隆太さんが等身大着せ替え人形のようにファン(多分)の女の子に“色々”されるという内容のPVで、その内容を見た事務所の社長からストップがかかり、まさかのお蔵入りを食らったというブツを観てみました。


(^ω^ )……アウト。 笑


いや、判定は微妙です。あまり内容のネタバレはしませんが、ベッドシーンが無ければひょっとしたらアリだったかもしれません。


少なくとも、暗闇の中、手が届かない光へと必死で手を伸ばし、≪夢だけを信じ/歩いて行こう≫と歌う希望溢れる歌の内容には、全く沿っていません 笑


でもすごく面白かったから、ぜひ見てみてください。



振り切った絶唱が心地いい、強靭でがむしゃらな新境地

13.ビリーバーズ・ハイ



最近なかなか珍しいド直球の王道ロボットアニメ『キャプテン・アース』の主題歌ということで、こちらも最初っから全力全開一曲入魂ハイテンションで音像が上昇気流を描くアッパーチューンです。


コーラスもつけないメインボーカルとピアノだけの歌い出しを聴いて「よっしゃ!」と思いました。


flumpoolにはこういう、ド頭から一気に行く振り切った感じというのが少なかった。

隆太さんのボーカルは線が細く聴こえますが、実はかなり強靭な声の力がありますから、『最初からクライマックス』な曲を、もっと聴きたいし、増やしてほしいです。


確固たるバンドのグルーブを手にした“ライブ映え”する曲

14.覚醒アイデンティティ



ラグビーW杯のテーマソングらしいワードが散りばめられたダンサブルなロックチューン。単なるロックじゃなくて、ロールしていますね。ホーンっぽいアレンジで装飾されてはいるものの、よりバンドで勝負できています。


『experience』の感想を書いた時もこの曲が『Because... I amツアー』の核になっていたというようなことを書いたように、本当にライブ映えする曲だと思います(まだ生では聴けてないの 笑)


この強力な武器をどんどんブラッシュアップさせてほしい。そして久しぶりにライブに行きたい(単なる願望)




大きな優しさを手にしたflumpoolが放った、珠玉のバラード

15.証



この歌の歌詞を読み解くと、実は主人公は一歩も動いていないです。最後に≪歩き出す≫となっているので、立ち竦んでいるばかりではないのですが、景色は全く動いていない。面白いです。


それにしても、山村隆太という人に“別れ”を歌わせると本当にいい詞を書きます。あんなイケ面(“いけづら”と読みます。イケメンを揶揄したくて俺が作った言葉です 笑)ぶら下げて一体どんな別れ多き人生を送ってきたというのか 笑


この歌でも最初のサビでの≪せめて笑顔で“またいつか”≫という部分を、≪“またね”って言葉の儚さ/叶わない約束≫と否定して見せた後で≪想う言葉は“ありがとう”≫と回収する見事な歌詞構成、見事です。


≪なのに追憶の破片を敷き詰めたノートに君の居ないページは無い≫なんて、とても合唱曲とは思えないワードを選択して我を出すことも忘れない。




以上、Disc1の15曲でした。


続きます。さらに五年後のflumpoolへ~flumpoolベストアルバム『MONUMENT』全曲感想②