July 11, 2024より,全訳を記します.

 

Chronic Rectal SchistosomiasisN Engl J Med 2024;391:166

慢性の直腸住血吸虫症

 

症例は29歳の男性で,2ヶ月前からの直腸からの真っ赤な血液を主訴に外来クリニックを受診されました.発熱や体重減少,下痢,血尿はありませんでした.彼はブラジル北東部の内陸部に住んでおり,定期的に川で入浴していました.身体診察では,左側腹部の触診でわずかな圧痛がありました.血清検査で,全好酸球数は470/mm3(基準値:34~420)でした.大腸内視鏡検査では,赤みを帯びたポリープ様の病変を直腸遠位部に認めました.病変部の生検によって,好酸球といくつかの住血吸虫の卵を含む深部炎症性浸潤が明らかになりました.慢性の直腸住血吸虫症の診断がなされました.住血吸虫卵が消化管内腔の粘膜下層に沈着すると,宿主の炎症反応によって異物反応が生じます.その後の線維化や炎症がポリープ様の病変を形成し,この患者で見られたように潰瘍化して出血することがあります.プラジカンテルによる治療が行われました.治療1ヶ月後,患者に出血のエピソードは見られなくなっていました.6ヶ月後のフォローアップの大腸内視鏡検査で,ポリープ様の病変は消失していました.

 

Lipschütz’s UlcerN Engl J Med 2024;391:e3

リプシュッツ潰瘍

 

症例は生来健康な17歳の少女で,7日前からの有痛性の性器潰瘍を主訴に救急外来を受診されました.発熱や倦怠感,咽頭痛を特徴とする7日間の病歴があり,潰瘍の発症の8日前に終えていました.性活動歴はないとのことでした.身体診察では,小陰唇の反対側に直径3.5~4.0cmの壊死性潰瘍が2個認められました.性感染症や妊娠に関する血液検査は陰性でした.EBウィルスの血清学的検査で急性感染の証拠が得られました.リプシュッツ潰瘍の診断がなされました.リプシュッツ潰瘍は,10代の少女や若い女性に最も多く生じる非性感染症性の急性性器潰瘍です.典型的には急性EBV感染のようなウィルス性疾患の後に,深在性の有痛性潰瘍が生じます.他の原因,特に性感染症が除外された後に臨床的に診断がなされます.病変は自然に良くなり,多くの場合,再発しません.局所および経口のグルココルチコイドによって治癒が早まることがあります.この症例では,安心させることに努めたほか,リドカイン外用と鎮痛薬服用による治療が行われました.潰瘍は6週間で和らぎました.