June 13, 2024より,全訳を記します.

 

Meigs’ SyndromeN Engl J Med 2024;390:2107

Meigs症候群

 

症例は生来健康な51歳の女性で,2ヶ月前からの呼吸困難を主訴に救急外来を受診されました.身体診察では,両肺底部の呼吸音の減弱と左卵巣由来と思われる,硬いが,圧痛のない骨盤内腫瘤が認められました.胸部Xpでは胸水が左側よりも右側に多く見られました.胸水を採取して調べると,細胞所見は陰性で,無菌性の滲出液であることが分かりました.腹部CTで骨盤内腫瘤と肝周囲の腹水が明らかになりました.CA125は1794.0 IU/mL(基準値:35未満)でした.その後施行した開腹術で,左卵巣腫瘍が見つかりました.腹膜転移はありませんでした.硬く平滑な腫瘤が摘出され,組織学的分析で線維腫と同定されました.腹水の細胞学的検査で悪性疾患は陰性でした.Meigs症候群,すなわち良性卵巣腫瘍,腹水,胸水の3徴の診断がなされました.Meigs症候群は卵巣癌と紛らわしいですが,腫瘍を切除すると腹水や胸水は良くなります.術後3週間してXpを撮ったところ,その時点で症状や胸水,腹水は和らいでいました.

 

Tuberculosis Verrucosa CutisN Engl J Med 2024;390:e58

皮膚疣状結核

 

症例は59歳の獣医師で,1年前からある右手の有痛性皮疹を主訴に皮膚科を受診されました.他に症状はありませんでした.身体診察では,右手背と右手示指の中央面に,厚い黄褐色の痂皮を伴う疣贅性の丘疹が見られました.手背の病変を生検すると,真皮に偽上皮腫性過形成と結核様の肉芽腫が明らかになりました.組織培養は陰性でしたが,組織のメタゲノム次世代シークエンシングによってMycobacterium tuberculosis(結核菌)が同定されました.インターフェロン-γ遊離試験は陽性で,胸部CTは正常でした.皮膚疣状結核の診断がなされました.皮膚疣状結核は皮膚結核の一種で,過去に感作された人の皮膚に直接病原体が接種されることで生じます.Mycobacterium属への職業暴露,特に家畜と接触することの多い人はリスク因子になります.イソニアジド・リファンピン・エタンブトールによる6ヶ月間の治療が開始されました.抗結核治療開始2ヶ月後のフォローアップで,皮疹は和らいでいました.