June 6, 2024より,全訳を記します.今回はいつもの2編です.小腸の腸重積,小児と成人の2パターンの提示です.

 

Small-Bowel Intussusception in a ChildN Engl J Med 2024;390:2010

小児における小腸の腸重積

 

症例は早産で生まれた3歳の男児で,1日前からの断続的な腹痛や吐き気,嘔吐を主訴に救急外来に連れて来られました.血便や病人との接触はありませんでした.バイタルサインは正常でした.腹部検査では聴音の低下と右下腹部の圧痛がありました.右下腹部の超音波検査で1.7×1.4cmのターゲットサイン病変が見られました.同病変の縦断像では2.4cmの小腸のセグメントが伸縮して存在し,これは「スリーブ徴候」と呼ばれる所見でした.回盲部の腸重積の診断がなされました.腸重積は小児における腸閉塞で最も多い原因です.ほとんどの症例で,小腸の腸重積は自然に軽減します.本症例では,最初の超音波検査の30分後,患者の症状と超音波検査の異常所見は和らいでいました.患者は1日間,病院で経過観察されました.腹痛の再発はなく,退院となりました.初診から3日後,フォローアップの腹部超音波検査が行われ,病的な先進部となる腫瘤は同定されませんでした.多くの小児の小腸の腸重積と同様に,本患者のエピソードは特発性と考えられました.

 

Small-Bowel Intussusception in an AdultN Engl J Med 2024;390:e53

成人における小腸の腸重積

 

症例は57歳の女性で,3時間前からの腹痛と嘔吐を主訴に救急外来を受診されました.腹部の身体診察では,びまん性の圧痛が上腹部で最も強く見られました.乳酸値は5.4mmol/L(基準範囲:0.5~2.0)でした.上腹部領域のポイント オブ ケアの腹部超音波検査で「ターゲットサイン」として知られる所見が認められました.その腫瘤を縦方向に見ると,遊離した液体と空腸外層の鞘の中に空腸のセグメントが活発に蠕動しているところが見られました.小腸の腸重積と診断され,CTで確認されました.腸重積は成人の腸閉塞の原因としては稀です.大半の症例は病的な先進部に関連しています.開腹手術が行われ,その間に腸重積は軽減しました.2.5×2.4×2.2cmの腫瘤が先進部として同定され,10cmの空腸とともに切除されました.病理組織学的解析によって,腫瘤は良性の線維芽細胞性ポリープであることがわかりました.患者は合併症なく回復し,術後8日目に退院となりました.