February 29, 2024より,全訳を記します.

 

Mpox Tongue LesionsN Engl J Med 2024;390:842

M痘の舌病変

 

症例はヒト免疫不全ウィルス(HIV)に感染している49歳の男性で,11日前からの有痛性の舌病変と1週間前からの咽頭痛・発熱を主訴にプライマリケアクリニックを受診されました.症状発現の9日前,男性パートナーと性行為を行っていました;そのパートナーは無症状でした.受診の5ヶ月前,患者のCD4細胞数は519/μL(基準範囲:297〜1551)で,受診の1ヶ月前,HIVウィルス量は検出されないレベルでした.身体診察では,中心部が黒ずみ,辺縁が膨隆した4つの潰瘍が,舌の先端と左外側面に見られました.圧痛を伴う顎下リンパ節腫脹も左側にありました.口腔内や咽頭,皮膚に病変は見られませんでした.舌の病変をM痘(以前はサル痘として知られていました)を起こすウィルスかどうかPCR検査したところ,陽性でした.M痘の診断がなされました.M痘は活動期には発疹が非常によく見られますが,この症例のように孤発性の口腔内の粘膜病変が唯一の皮膚粘膜症状である場合があります.患者は診断後,プライマリーケアでのフォローアップが途絶えてしまったので,抗ウイルス治療は行われませんでした.2週間後に別のクリニックに電話で予約を取った際,いつもの健康状態とのことでした.

 

Crazy-Paving Pattern in Pulmonary SarcoidosisN Engl J Med 2024;390:e21

肺サルコイドーシスにおけるcrazy-pavingパターン

 

症例は28歳の女性で,6ヶ月前からの乾性咳嗽を主訴に受診されました.彼女はずっと非喫煙者であり,発熱や関節痛,眼痛,発疹はないとのことでした.身体診察では両下肺に捻髪音が聴取されました.胸部の高解像度のCTで,縦隔リンパ節腫脹とびまん性すりガラス陰影が明らかになりました.また,小葉間および小葉内中隔の肥厚が重なり合った領域が認められ、crazy pavingとして知られる,不規則な敷石に似たパターンでした.血清アンジオテンシン変換酵素レベルは80U/Lでした(基準範囲:17〜55).その後行われた経気管支肺生検で,多発性の非乾酪性肉芽腫が認められました.気管支肺胞洗浄液の培養および組織病理学的分析,分子生物学的検査で,結核菌などの感染性病原体は陰性でした.肺サルコイドーシスの診断がなされました.crazy-pavingパターンは一般に肺胞蛋白症と関連しますが,ARDSやニューモシスチス肺炎,本症例のようなサルコイドーシスなどでも見られます.プレドニゾンの漸減投与が開始されました.治療開始から6ヶ月後までに患者の症状は軽快し,画像所見も著明に改善しました.その時点でプレドニゾンは中止されましたが,患者の状態は安定していました.関連する症状も再発せず,1年後の経過観察での胸部CTでも病変の進行は認められませんでした.