February 15, 2024より,全訳を記します.

 

Plummer–Vinson SyndromeN Engl J Med 2024;390:652

プランマー-ビンソン症候群

 

症例は39歳の女性で,4年前からの疲労感と徐々に悪化する固形物に対する嚥下障害を主訴に内科クリニックを受診されました.彼女は菜食を遵守しており,消化管出血や月経過多はないとのことでした.身体診察では結膜が蒼白で,匙状爪がありました.血液検査では重度の鉄欠乏性貧血が認められました.上部消化管内視鏡検査を行うと,少なくとも2つの狭窄が頸部食道に明らかになりました;より頭側にある狭窄は内視鏡を通過させることができませんでした.続いて行ったバリウム嚥下検査で2つの食道ウェブ,すなわち食道内腔に突出した非対称的な膜が狭窄の原因であることが判明しました.プランマー-ビンソン症候群の診断がなされ,経静脈的な鉄補充療法が開始されました.プランマー-ビンソン症候群は,鉄欠乏性貧血と嚥下障害,食道ウェブが3徴です.初回内視鏡検査から1ヶ月後,再度内視鏡検査が行われ,狭窄部のバルーン拡張が行われました.出血源は同定されず,ヘリコバクター・ピロリ感染やセリアック病を評価するための組織生検は陰性でした.大腸内視鏡検査でも出血源は認めませんでした.小腸のビデオカプセル内視鏡検査は,費用の問題から行われませんでした.鉄による治療を3ヵ月間行ったところ,患者の嚥下障害と貧血は消失しました.

 

Symmetric Drug-Related Intertriginous and Flexural ExanthemaN Engl J Med 2024;390:e17

左右対称性の薬剤関連間擦部・屈曲部発疹

 

症例は42歳の健康な女性で,10日前からの腋窩と鼠径部および腹部に発疹を受診されました.発疹発症の1週間半前,膝の痛みを治療するためにデクスケトプロフェン(非ステロイド性抗炎症薬[NSAID])を1日25mgで服用を開始していました.発熱や粘膜病変,軽度の掻痒感以外の症状はないとのことでした.身体診察では,剥離した辺縁を伴う赤紫色の対称性の斑が頸部や腋窩,腹部や鼠径部,背部の間擦部にありました.発赤の外観とNSAIDの使用から,左右対称性の薬剤関連間擦部・屈曲部発疹(SDRIFE)の診断がなされました.SDRIFEは薬剤が誘発する発疹で,間擦部・屈曲部の対称性の発疹の存在と全身症状を欠いていることが特徴です.β-ラクタム系薬剤やマクロライド,NSAIDsの使用が誘因となります.グルココルチコイド外用薬による治療が開始され,デクスケトプロフェンによる治療を止めることが推奨されました.初診から1ヶ月後,患者の発疹は和らいでいました.