January 18, 2024より,全訳を記します.

 

Exogenous Ochronosis from Skin-Lightening CreamN Engl J Med 2024;390:254

美白クリームによる外因性のオクロノーシス

 

 

症例は55歳の女性で,1年前からの顔の皮膚の黒ずみを主訴に皮膚科クリニックを受診されました.受診の2年前から,肝斑の治療のために毎日顔にヒドロキノンを含有する美白クリームを塗り始めていました.身体診察で,紅斑を背景に毛細血管拡張を伴う青褐色の斑点が頬や鼻梁,口周囲に観察され,額にはあまり見られませんでした.患部のダーモスコープによる検査で,高色素性の,ピンポイントの斑が明らかになりました.左頬の皮膚生検標本では,真皮内で黄褐色のバナナ状の小体が細胞外に沈着していました.美白クリームによる外因性のオクロノーシス(組織褐変症)の診断がなされました.オクロノーシスは組織内に黄土色の沈着物が蓄積することで生じる色素沈着過剰症です.アルカプトン尿症に関連する場合を内因性,美白クリーム使用に関連する場合を外因性とみまします.外因性のオクロノーシスは治療が難しく,元に戻らないことがあります.患者は光から保護することの重要性や皮膚クリームの使用中止について説明を受けました.居所的なエモリエント(柔軟化粧水)やレチノイドジェルも処方されました.2ヶ月後のフォローアップで,色素遅着はわずかですが良くなっていました. 

 

Pubic LiceN Engl J Med 2024;390:e6

陰部シラミ

 

症例は59歳の男性で,4週間前からの陰部の強い痒みを主訴に皮膚科を受診されました.受診の16週間前,彼は新しいパートナーと性的接触がありました.身体診察では,小さな褐色の幼虫や動くカニの形状をしたシラミが,陰毛のそれぞれ軸と基部に付着しているのが見えました.ダーモスコープによる検査で,一端に頭部または開口部を有する幼虫と,6本足の血液を吸っているシラミが明らかとなりました.陰部シラミの診断がなされました.陰部シラミ(ケジラミ)は性的接触による感染が最も多い寄生虫です.ライフサイクルは幼虫(または卵),若虫,そして成虫の段階があります.成虫は血液を栄養にしないと48時間以内に死んでしまいます.局所的なリンデン,すなわちその地域で唯一入手可能な殺シラミ薬による治療が行われました.梅毒やHIV感染,淋菌の検査は陰性でした.患者はまた,治療が成功するまで衣類やベッドシーツはお湯で洗い,性的接触を避けるよう指導されました.治療が終わって1週間後,痒みは軽減していました.