新年明けまして,おめでとうございます.今年も自己研鑽のためにNEJM:Images in Clinical Medicineの和訳コーナーは続けていこうと思います.December 28, 2023より,全訳を記します.

 

Idiopathic Intracranial HypertensionN Engl J Med 2023;389:2467

特発性頭蓋内圧亢進症

 

症例は重度の肥満を有する25歳の女性で,1週間前からのぼやけた視界や一過性の視力低下,連日の頭痛,間欠的なシューっという音を主訴に救急外来を受診されました.BMIは57でした.神経学的検査において,視神経乳頭腫脹と網膜出血が両目で存在しました.視野検査や脳神経検査は正常でした.頭部のMRIや静脈造影検査で前眼球が平らになり,視神経頭の著明な挙上やトルコ鞍空洞,閉塞や塞栓のない横静脈洞の狭窄を伴っていることが明らかになりましたーこれらは全て脳脊髄液圧上昇を示唆するものでした.腰椎穿刺で開放圧は55cm水柱と上昇していました(基準値:10~20);脳脊髄液の検査結果は正常でした.特発性頭蓋内圧亢進症の診断がなされました.特発性頭蓋内圧亢進症は肥満と関連した疾患で,頭蓋内圧の上昇の結果生じる症状,例えば頭痛や複視,視野欠損,拍動性耳鳴を呈します.高用量のアセタゾラミドによる治療が開始され,体重減少に関するカウンセリングが行われました.1ヶ月後のフォローアップで,乳頭浮腫は軽減しており,アセタゾラミドによる治療は続けられました.

 

Clonorchis sinensis Liver FlukesN Engl J Med 2023;389:e57

Clonorchis sinensis による肝吸虫症

 

症例は胆管内視鏡検査を受けた70歳の男性で,胆管に扇形動物(扇虫)がいることが分かりました.処置の1週間前,患者は局所的なS状結腸腺癌の診断を受けていました.腹部CTで総胆管結石や総胆管拡張があり,遠隔転移はないことが示された後,腹腔鏡下腫瘍切除術や胆嚢摘出術,胆管内視鏡検査の予定が立てられました.胆管内視鏡検査で,5匹の大きな扇虫が胆管内でうごめいている様子が観察されました.2匹が摘出され,肝吸虫の1種である,Clonorchis sinensis と判明しました.C. sinensis は東アジアで流行しています.感染は生もしくは調理不十分の淡水魚やエビを食べることで起きます.幼虫は摂取された後,十二指腸でシストから現れ,胆管枝を上行して,胆管や胆嚢,肝臓で成虫になります.急性感染の大部分は無症候性です.慢性感染では胆管癌を合併することがありますが,本症例ではそのような状態は存在しませんでした.感染は典型的には便中の寄生虫卵の同定によってなされますが,本患者の便検査は陰性でした.扇虫が除去された後,プラジカンテルによる治療がなされ,S状結腸癌に対する補助化学療法が開始されました.