August 31, 2023より,全訳を記します.

 

Biliary AscariasisN Engl J Med 2023;389:839

胆道回虫症

 

症例は75歳の男性で,3週間前からの発熱や青白い便,悪化する疝痛性の腹痛を主訴に救急外来を受診されました.彼はきれいな水へのアクセスが制限されるコロンビアの南西地域に住んでいました.体温は38.2℃でした.身体検査で右上腹部に腹部圧痛があったほか,黄疸が見られました.血液検査では好中球増多を伴い白血球数は24,870/μL(基準値:4000~10,000),抱合型ビリルビン値は3.8mg/dL(基準値:0~1.2)でした.右上腹部の超音波検査で胆管の泥と総胆管にエコー源性の管状構造が見られ,結果として肝内・肝外胆管拡張を伴っていました.ERCPが行われ,虫体が乳頭部から出ている様子が観察されました.除去後,虫体は成虫のAscaris lumbricoides 回虫であることが分かりました.胆管は造影剤を注入すると分かれて見え,他に2個の虫体が明らかとなり,バルーンカテーテルを使って取り除かれました.胆道回虫症の診断がなされました.感染に対する治療のためにアルベンダゾール,二次性の胆管炎に対する治療のためにピペラシリン-タゾバクタムの投与が行われ,症状は除去後1週間以内に和らぎました.

 

Renal Artery Thrombosis in Essential ThrombocythemiaN Engl J Med 2023;389:e16

本態性血小板血症における腎動脈血栓

 

症例は73歳の女性で,2日前からの左側腹部痛を主訴に救急外来を受診されました.心血管リスクや喫煙歴はありませんでした.体温は38.5℃でした.身体検査は問題ありませんでした.血液検査で血小板数は652,000/mm3(基準値:150,000~400,000)でしたが,その他の血算は正常でした.過去の血小板数は不明でした.LDH値は422U/L(基準値:100~250)でした.腹部造影CTで左腎動脈の造影欠損と左腎皮質の灌流欠損が明らかになり,左腎動脈の閉塞性血栓とそれに関連した腎梗塞に矛盾しない所見でした.更なる検査で心塞栓性疾患や腎動脈傷害,遺伝性血小板血症は認められませんでした.持続性に血小板数が上昇するため,JAK2 V617Fの遺伝子検査が行われたところ,陽性でした.本態性血小板血症の診断がなされました.本態性血小板血症は動脈あるいは静脈の血栓を併発することがあります.この状態を有する患者の治療目標は血管イベントの予防になります.ヒロドキシウレアとアスピリンによる治療が開始されました.2ヶ月後のフォローアップで,患者の体調は良く,血小板数は正常化していました.