グリンゴルツ・ザルツブルグのアイーダ | 楕円球空間

グリンゴルツ・ザルツブルグのアイーダ

NHK-BSで放送されたものを録画して順番に視聴。

 

なんといってもまずはイリヤ・グリンゴルツ。前回は2年前か、東京での演奏会の録画をBSで見て、あまりの完璧なテクニックと優れた音楽性に驚嘆した。存命のヴァイオリニストで、最も自分が評価する人。若手、という範疇でなく、老人まで含めて。今回はパガニーニのカプリスと、イタリア人現代作曲家シャリーノの6つのカプリスを同時に、しかも演奏番号は本人の音楽的信念にあわせて自由に変更して演奏、というどえらいプログラム。だいたいパガニーニの24曲を全部やるだけで大変なのに、更にハーモニクス奏法バリバリの超絶技巧×2みたいな曲を加えるんだから尋常ではない。

 

尋常ではないのは演奏のほうがもっとすごくて、パガニーニのカプリスがなんだか普通の曲に聴こえる。テクニックが曲の要求する技巧を遥かに凌駕しているので、難しい曲に聴こえない。確かに昔から簡単そうに弾く人はいたけど、やはり音程が少し崩れたり、少しは破綻があって「あー、ここは難しいところなんだよねー」と素人好事家が頷く、というシーンがありそうな部分はあった。でもグリンゴルツはそれがない。マシンのように完璧に弾くんだけど、歌心のある演奏になっていて、24のカプリスっていい曲なんだな、と単純に思える。

 

もう追っかけるしかない。

 

で、もう1つのアイーダ。近年、ドスコイ度(定食屋のおばちゃん度、とも言う)がいや増すネトレプコが初めてアイーダを歌う。指揮はムーティ皇帝陛下。あれ?皇帝陛下は「老人やスモウレスラーの歌うヴェルディなんて指揮できない!」とスカラ座監督の頃はおっしゃっておられたはずだが・・・。まぁ老境に入って度量が広くなられたのか?演奏のほうはムーティらしさもそこかしこに感じられる一方、テンポが昔より遅くなり、やはり所々水分の多い演奏になってしまうのは仕方のないところか・・・。それでも凡百の指揮者と比べれば圧倒的にドラマツルギーのある充実した演奏なんだけど。クライバーも晩年そうなったし、皇帝陛下もそろそろ引退なのか・・(髪も真っ白、指揮台には譜面、メガネ着用)。ネトレプコのほうは演出のおかげもあって、かなり歌唱に集中できる状況で、そうなるとやっぱり圧倒的にうまい・・・。本当に。高音・弱音でも破綻がなく、声に芯が残ったまましっかりした歌になっている。共演の人はかわいそうだ。

 

もう実演のアイーダはみなくてもよい、とアイーダからの引退を宣言した自分だが(数年まえのウィーンで)、もう一回くらいいい演奏なら見てもいいかなぁ。