- 本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 (「戦後再発見」双書2)/創元社
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日米地位協定だけ調べるならば、アメリカの理不尽さを感じるならばこの本。
しかし、個人的に憲法より大切とは言いすぎではなかろうか?
外交という面において私は3人の重要人物を挙げたい。
高村正彦さん、石破茂さん、藤原帰一さん。
この本をそのまま捉えるならば「米軍基地いらんやん!」「アメリカひどすぎ!」「日本弱すぎ!」
と感じるだろう。
しかし高村正彦さんはNHKの討論番組などで「アメリカが日本の言う事を全て聞くわけではない」
「日本もアメリカの言う事を全て聞くわけではない」と毅然と発言している。
日本ではあまり有名ではないが、
高村さんは現時点で日本で一番外交に経験がある政治家といっていい。
外務大臣としての任期が長く、2回務めている。
実際に国の代表として外交を務めた高村さんだからリアルに感じる。
この本のようにアメリカの言いなりになっているとは少し言いすぎではなかろうか?
石破茂さんは当然日米地位協定を知っているし、理解している。
理解した上で日本の防衛については米軍は必要と本に書いている。
もちろん実際に米軍の抑止力があきらかに発揮された事例はない。
しかし、法律上「軍隊」を持たない日本はどうしても米軍の力がいる。
自衛隊だけでは日本を守りきれない。
詳しくは国防という本に書いてあるので参考にしてください。
藤原帰一さんは国際政治の第一人者。
この本にはほとんど日本とアメリカしか出てこないが、外交を考えるなら
当然他の国も入ってくる。
藤原さんは日本とアメリカだけではなく、北朝鮮、韓国、ロシア、中国、東アジアなど、
相互関係を語れる日本で唯一の存在。
この本もそうだし、テレビ番組とかだと日本VSアメリカとか日本VS中国とか
一対一の場合が多いが、実際はそうではなく、周辺諸国のお互いの関係が非常に重要で、
お互いに牽制しながら味方になるけど敵になったり複雑に影響がある。
あと藤原さんは軍事だけならアメリカに依存しているが、経済的にはよくアメリカと喧嘩している
と発言している。
確かにバブルの時とか貿易摩擦とか結構やりやってきた。
前泊さんの本を全て読んだわけではないが、おそらくこの3人の名前は出てこないだろう。
この3人の本を読んだり発言を聞いていると、この本の視点がいかに狭いかがわかる。
日米地位協定だけを知るならこの本が一番だが、
だからと言って憲法より大切とかアメリカの言いなりは少し言いすぎだと思う。
例えば米軍の飛行機が日本の領土に墜落しても日本は手を出せないなど、
なるほどと感じることは多いが、誤解する事もある本だと思う。
元々は雑誌「SIGHT」にて前泊さんに興味を持ったので購入したが、
終始アメリカ批判とか一方的な話に徹しているのがイヤになった。
これは官僚批判でおなじみの「官僚の責任」を書いた古賀さんの本を読んだ時の
絶望感に近い。
古賀さんの官僚批判はわかる。わかるがそれだけに徹しているのがイヤになる。
悪い官僚もいるだろうが、現実的には官僚は必要。
もっと広い視点で書いてほしかった。