- 将棋・名局の記録 ~観戦記者が見た究極の頭脳勝負と舞台裏~ (マイナビ将棋BOOKS)/マイナビ出版
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今回はこの本のレビューをアマゾンに載せました。
前回清水潔さんの本でレビューの先頭を走っていますが、今回はどうなるか?
「絶妙すぎる英断」
411人。。。
いつも通り何となくキンドルにダウンロードしようとしたが、
まず違和感が先行した。
この数字は
2016年1月現在 筆者である大川慎太郎さんのツイッターのフォロワー数である。
第一感少ないと思った私は下世話なのだろうか?
一般の方でも知り合いや友達が多い人はこの人数を上回っているだろう。
失礼ながらこの数字から勝手に推測すれば、
たとえ相当将棋に詳しい方であっても、ともすればプロ棋士の方でも
大川さんは誰か?と聞かれても「知らない」と答える人が多いのではなかろうか?
これが一つ目の違和感。
二つ目は収録された対局。
アマゾンの紹介や他の方のレビューを見ればわかるが、
今回収録された対局はタイトル戦が多いが、
いわゆる名局、名局賞を獲得された対局は少ないというか
無いといっていい。
では何故今回名局の収録を見送ったのか?
以上二つの違和感によりダウンロードするまで少々躊躇することになったのだが、
一旦ダウンロードして読み始めるとその躊躇してしまった自分への恥ずかしさが湧き上がり、
二つの違和感が解消される事になる。
「パリは雨に煙っていた」
このワンフレーズでいかに大川さんの記事が素晴らしいか解る。
こんな文学的な表現で記事を書けるのは大川さんしかいない。
ちなみにこのフレーズは竜王戦での観戦記の冒頭だが、
普段将棋好きな方からすると対局者の心理描写とか、文学的な表現よりも
指し手の解説や対局者の感想をたくさんしてくれ!という想いがあるだろう。
しかしそれでは面白くない。味気ない記事になってしまうという事で、
前述のような文学的なフレーズを使う事になる。
大川さんの記事はそのバランスに妙があり、あまり文学的なフレーズも過剰にもならず、
指し手の解説も公平性がある。
ちょっと大げさかもしれないが、文章だけで対局者の表情は解るし、
温度までも伝わってくる。
「絶妙なる英断」
例えば単純に注目されたい、人の関心を引きたいと思うなら、
誰と誰が仲が悪いとか、男性棋士と女性棋士の恋愛とか
あたかも女性週刊誌のようなゲスを極めた記事を載せるべきだし、
対局も誰も知っているような、盛り上がった対局を載せるべき。
しかし、今回の大川さんの選択。
そしてその大川さんの腕力を信じて発売を決断した出版社。
正に「絶妙すぎる英断」だと思う。
「そんな観戦記なんか誰が書いても一緒じゃん」と思う方もいるでしょう。
そんな安易な決断は羽田圭介さんの観戦記という悲劇を生む事になる。
たとえ芥川賞作家といえども将棋の観戦記は難しい。
長いレビューになった事を謝罪します。
将棋に関心が薄くても文章に興味がある方は是非読んでみてください。
