Swami JRの同タイトルアルバムの中の、タイトル曲。丸谷才一さんの書評本で、須賀敦子さんの「ミラノ霧の風景」についての書評を読んだら、多分、そこに書かれてた事を、というか、須賀さんが、ずっと題材としている事自体が、多分、Saudadeという物かも、と思った(生命のはかなさ、この世にあるモノのはかなさ、とかも、ずっと書いてらっしゃる気もするけど。喪失とか、失ってしまったものへの愛惜、等が、よくモチーフとして描かれてる)。そういうSaudadeについて歌った歌。単語は簡単だけど、難しい。メロディは、ちょっと物悲しい曲調。

 失った恋について歌った歌なんだけども、あるいは、サンバの故郷である、アフリカ大陸の事も、彷彿させている。なかなか、知的な歌詞と思ったら、シコ・セザールとの共作なんだ。何となく、言葉使いが、練られた感じがしたんで。このアルバムの他の曲にも、似た内容の、海について書いた歌詞があって、多分、そんな感じの意味が込められてるような感じ。アルバムタイトル曲でもあるし。

 スワミJR本人の歌声も、実はなかなか好き。こういう、器楽奏者が歌ったアルバムの中にも、良いアルバムがある。仏教用語でいう所の、「彼岸」の事かな?、と思って、英語で、仏教用語の彼岸の事を、何というのか、和英辞書でひいたけど、分からなかった。向こう岸、でもいいし、いっそのこと、彼の岸と表記してもいいのかも。海の、向こう側の岸、なのだから、やっぱりアフリカとか、だろうな…。

 しかし、日本の、ちょっと凝った歌の歌詞でも、失恋の歌詞で、ここまで複雑な事象や、表現を使わない気がする。さすが、ポルトガル語の言語世界。ま、日本の音楽の歌詞は、よく分からないんだけど…(笑)。和歌とかの世界では、こういう2重に意味をもたせたり、というのは有る気がする。多分、間違いが色々ありそう。にも関わらず、とても素敵な歌詞なので、Upしてしまうという暴挙(笑)。

 シコ・セザールの日本盤の歌詞を読んだら、彼の曲の中で、有名曲、ヒット曲の、Mama Africa、A Primeira Vistaの歌詞を読んだら、ごく簡単な単語で、すごく深い文章表現をしてて、巧いなー、と思った。さすが元ジャーナリスト。日本盤の国安さんのA Primeira Vistaの訳も、素晴らしかった。このSwami JRのアルバムでは、Jose Miguel Wisnikも詩を書いてたりして(同じく、Swami JRが参加してた、Ricardo Teteのアルバムにも、Wisnikの名前が出てきてたなぁ)、やはり、全体に知的な感じの漂ったアルバムなのだった。

※原詩、上げておきます。間違いなどご指摘、宜しくお願いします。
 

Outro Praia

いい風が、海から吹いてくる
向こう岸の想い出の中から、吹いてくる          
私に向けて、ただ私に向かって、吹いてくる   
その風は、ダンスを練習して、スカートの裾を揺らす          
微かな風は
私が過ごした時間を、はらんでいた        
しかし、私は失ってしまった
私は茫然とした               
なぜなら、私は、あなたを感じる事が出来ないから        
愛を持ち、向かうべき場所だった、あなたを   
けれど、向こう岸の想い出は
私を、そんな風にしてしまった         
そして、人生は、火酒を静かに織り込んでいく  
微かな風が
知らせる為に、時間を運んでいく       
生きる事とは、息づいて、存在する事だと、分からせるために  

私はどこから来たの?              
私はどこへ行くの?
向こう岸の想い出が、私に残り、      
私に作用しているとすれば      
私の同盟、私の見張りなのだ   
微かな風
愛は、空気のある所に存在すると、分かれば、        
私は、時と、あなたから、恵みを沢山受ける  
風は、その音が良い           
向こう岸の、想い出を従えて、
私に、示してくれる                   
たとえ、私が思い悩むとしても、ここには希望があると。   
微かな風
私が失った、あの日々を、私は評価する          
なぜなら、許しは、無意味ではないから         
ようやく、私が、そよぐ風に耳をすませるとすれば      
                               



Outra praia

vento bom vem do mar
vem de lembrança de outra praia
sopra em mim só pra mim
ensaia a dança as saias
vento leve
teve um tempo em que vivi
mas perdi
me perdi pois não senti você
tive amor e onde ir
mas a lembrança de outra praia
fez de mim só assim
e a vida trança mansa cambraia
vento leve
leva um tempo pra saber
perceber que viver
é respirar e ser

de onde vim?
pr'onde vou?
se a lembrança de outra praia
sobra em mim e obra em mim
minha aliança,minha tocaia
vento leve
devo tanto ao tempo e a ti
por sentir que o amor
é onde está o ar

vento é bom o seu som
com a lembrança de outra praia
mostra-me que aqui
há esperança mesmo que eu caia
vento leve
louvo o tempo que perdi
pois,perdão,nada é vão
se ouço o sopra enfim.