今回は「景観」という観点から川をみていきたい。
川の風景は人の心を癒す。
水の流れと、緑、生き物を感じることができる。
色、形、動き、そして音、香り、すべてにおいて。
明治以降、洪水を防止したり、水をエネルギーとして利用するために、人が川の姿を変えてきた。
人が川を支配した。
そして時が平成に入り、脱工業化社会のもと、人間性の復権が重要視されるようになってきた。
経済性ではなく、五感で感じとるものに価値がつく時代。
河川の景観についても同様だ。
---しかし、河川の景観を取り扱う上では、以下のような課題があった。-------------
(長くなるので、興味のない方は、「---」まで飛んでいただきたい。)
■第一の課題は、環境はあくまで配慮事項であり、河川工作物の本質的な機能はあくまで治水であるという制約である。
■第二の課題は、公共性とコストの絡む問題である。
戦後以来適用されてきた最低価格で最大の効果をあげるという価値基準をいかに改革するかである。
景観設計は贅沢だとばかりに削減される危険性があるのだ。
■第三の課題は、河川の縦横断面や平面形状の概略設計が、既に昭和30~40年代頃に治水・利水機能のみで定められていることである。
高水敷の計画されている河川ではそこに空間の余地があるが、単断面の計画では工夫の余地は非常に少ない。
そのような中でも、特別に景観設計が可能であった事例も例外的に存在する。
それらは、河川計画の初期的段階から取り組むことができたケースや、
河川空間に洪水処理上必要な横断面以上に余裕がある場合、
そして沿川に利用可能な用地が買収できたり一体的に利用できる公共施設などがある場合などである。
この事例における特徴は以下のような点である。
■第一に、空間制約が緩くなり、多様な空間を設けていること。
■第二に、コスト制約が緩和され(補助金等)、多様な素材とディテールが使われること。
■第三に、技術の発達により、自由で多様なデザイン様式の組み合わせが使われること。
モダンやポストモダンといった新しいデザイン様式では、素材やパターンの組み合わせが自由である
■第四に、住民や自治体の参加による、河川空間と沿川空間との一体化の促進である。
コンクリートを使った技術の発達とデザインの自由度が増した
河川を取り扱う土木関係者には、科学的に最適な一つの正解があるはずだとする考え方もある。
しかし景観やデザインはそうではない。
同様の機能を満たすデザインの中から感性が好むものを選択するものである。
上記の特徴の下、いくつかの川で整備が行われており、住民の景観への要望も満たされてきた。
さて、このような整備を推進したのは、「多自然川づくり」という方針があったからであるので、簡単に説明したい。
この定義は、”河川全体の自然の営みを視野にいれ、地域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮し、生物の生育環境、河川景観の保全や創出のために、河川管理を行う”というものである。
つまり、川づくりは
生物と、
景観と、
地域の暮らし
に配慮するというきまりである。
この考えは当初、スイス・ドイツからの技術移入によってもたらされたが、これらの国と日本ではいくつ異なる点があり、定着までに時間がかかってしまった。
それは、土地条件と、気象条件である。
■土地条件
日本では平坦地が狭く、高人口密度で、土地の入手が困難である。
自由な流れを許容できるヨーロッパに対して、
日本では、河川を狭い土地に押し込めて土地を有効利用する事を前提に、自然を復元しなければならない。
■気象条件
降水量が年間を通じて少ない温和な西岸海洋性気候の西欧に対して、
雨量が多く台風にみまわれるモンスーン気候の日本では、洪水からの防御も大きな意味を持つ。近隣の田畑や家々を守らなければならない。
しかし利点もある。一度破壊したら容易には回復しないスイス・ドイツの自然に対し、我が国の自然は放置すれば草原から森林へと遷移が進む強い復元力を持っているのだ。
しっかりとした骨格が整えば、現代の要望にあった川に変えていくことができる。
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ではここからは、やっと景観について記載する。
川での景観保護の意義は以下の7つである。
1.理念的意義 畏敬の念
2.美的意義 鑑賞者の喜び
3.社会的意義 レクリエーション
4.地域的意義 地域イメージ
5.経済的意義 観光資源
6.科学的意義 研究対象
7.生命維持のための意義 大気・水・土は生命の前提である
これらを満たすために、現在実施されているのは以下の方策である。
・護岸の明度を明るくしすぎない(明度6以下に)。護岸には石積みを使い、自然の質感をだす。
・水辺に近づける傾斜のゆるい階段の設置
・散歩道の設置と、木陰創出のための樹木植栽。木陰は雑草の繁殖も押さえられる。
・川幅はできる限り広くとり、自然のいとなみで、砂州や河原ができるように。
(洪水で広がった川幅は、もとに戻す工事ではなく、そのままに。)
・護岸はできるだけつくらないようにする。
(流速が遅い場所、湾曲部の内側など)
・護岸の露出は最低限に、護岸の上から土をかぶせ、水と緑の連続性を創出する。
とくに都会では、川は数少ない憩いの場である。
散歩、休憩に利用する人は多くいる。
色、音、香り、すべてにおいて、人々が求める自然とのふれあいがそこにあり、
新しい技術を取り入れ、コストをかけて整備する価値がある。
住民だけではなく、海外からも人をひきつける価値のある空間にできるポテンシャルを秘めている。
川は人々が気軽に自然を感じることのできる場所なのである。
