俳諧伝授 -48ページ目

月夜かな

昨夜は十六夜(いざよい)でしたね。


十六夜
陰暦八月十六日の夜、またはその夜の月に言う。十五夜よりやや遅れて出るので、ためらいながら出る月の意で、「いざよう月」とも用いる。いざようとはたゆたい、ためらうことである。「二八夜」・「十六夜(じゅうろくや)」・「既望(きぼう)」(「」内は傍題)
〔山本健吉『最新俳句歳時記』(文藝春秋刊)〕


十六夜や囁く人のうしろより  千代女(ちよじょ)(1703~1775)


|いざよいや○○|ささやくひとの|うしろより○○|


この「十六夜」は月のことですね。


「十六夜や」「囁く人のうしろより」と、上五で切れていますから、「囁く人のうしろより」月が出たわけではありません。


月の出を待っていると、後ろから人の囁く声がしたのでしょう。


これが名月なら「おお!」とか感動の声があがったでしょうが、「囁く」というところに「十六夜」の感じがよく出ています、「たゆたう・ためらう」と「囁く」の響き合いですね。


さて、今夜の月は「立待月(たちまちづき)」です。


立待月
陰暦八月十七夜の月である。山の端に出る月を立って待つ心である。「立待」・「十七夜」(「」内は傍題)
〔山本健吉『最新俳句歳時記』(文藝春秋刊)〕


にわか・すぐ・急・早速という意味の「忽(たちま)ち」は、この「立待月」の「立待」が語源(の一説)なのだそうです。


次の夜の月を「居待月(いまちづき)」と云います。


居待月
陰暦八月十八日の夜の月である。立待よりやや月の出が遅れるので、月の出るのをすわっていて待つ心である。「居待」(「」内は傍題)
〔山本健吉『最新俳句歳時記』(文藝春秋刊)〕


立って待って、座って待って、そうです、次は寝て待つんですねぇ。


臥待月(ふしまちづき)
陰暦八月十九日の夜の月で、居待よりさらに遅く、臥しながら月を待つ意である。「臥待」・「寝待月(ねまちづき)」・「寝待」(「」内は傍題)
〔山本健吉『最新俳句歳時記』(文藝春秋刊)〕


え?もう終わりだろう?いえいえ、まだあります。


更待月(ふけまちづき)
陰暦八月二十日の夜の月で、亥(い)の正刻(午後十時)に出るので、「二十日亥中(はつかいなか)」とも言う。「更待」・「亥中の月」。二十日月と言ったら、とくにこの日に限らない。(「」内は傍題)
〔山本健吉『最新俳句歳時記』(文藝春秋刊)〕


十五夜、十六夜、十七夜までは、それだけで陰暦八月の該当の日の月を示すのですが、さすがに二十日月は特定の月の月を指さないようです。


さて、陰暦八月の月の特別な呼び名の最後です。


眞夜中(まよなか)の月
陰暦八月二十三夜の月で、子(ね)の刻(十二時)に出るので、この名がある。「二十三夜」(「」内は傍題)
〔山本健吉『最新俳句歳時記』(文藝春秋刊)〕


では、仲秋・陰暦八月の特別な呼び名の月をまとめておきましょう。


十五日:名月・芋名月・今日の月・今宵の月・今宵月・三五の月・端正(たんしょう)の月・名高き月・望月・満月・明月


十六日:十六夜(いざよい)・いざよう月


十七日:立待月・立待


十八日:居待月・居待


十九日:臥待月・臥待・寝待月・寝待


二十日:更待月・更待・二十日亥中・亥中の月


二十三日:眞夜中の月


ほかに、十四日の夜を「待宵」その月を「小望月」。


曇ったり雨が降って名月が見られない場合を、「無月」「曇る月」「雨月」「雨名月」「雨の月」。


また、陰暦八月初めのころの月を、仲秋初めての月を賞して「初月(はつづき)」「初月夜」とも云います。


まえにもお話ししたように、俳諧の連歌には「花の定座」「月の定座」が定められていて、「月」は「花」に次いで大切にされていました。


上に挙げたのは陰暦八月における月の特別な呼び方ですが、たんに「月」と云っても、それは「秋の月」つまり、秋の季語なんですね。


では最後に、「月」の膨大な傍題を挙げておきましょう。


上弦・下弦・げげん・弓張月・片割月・弦月・半月・月の弓・月の舟・上り月・下り月・望くだり・有明・有明月・朝月・朝月夜(あさづくよ)・昼の月・夕月・夕月夜・宵月・宵月夜・四日月・五日月・八日月・十日月・二十日月・月の出・月の入・入るさの月・月上る・月渡る・月傾く・月落つ・月更くる・遅月・月の秋・月夜・月よみ・月夜烏・月の輪・月の暈(かさ)・弦月・月白などなど。



芋を煮る鍋の中まで月夜かな  森川許六(もりかわ・きょりく)(1656~1715)


|いもをにる○○|なべのなかまで|つきよかな○○|


スゥッ・・・(ーoー)y゜゜゜