俳諧伝授 -46ページ目

水車

きょうは陰暦八月十八日、今夜の月は「居待月」です。


あいにく空は雲に覆われ、月は見えません。


ということなので(?)「名月」の発句をお届けしましょう。



名月や汲まぬもさむき水車  言水


|めいげつや○○|くまぬもさむき|みずぐるま○○|


季節は「名月」で秋。


池西言水(いけにし・ごんすい)(1650~1722)の俳諧の発句です。


「水車」は、ご存知のように昔から精米に利用されてきました。


あるいは、田に引く水を汲みあげるのに使われることもありました。


「汲まぬ」ですから、いま水車は動きを止めているのでしょう。


ちょうど米の収穫の季節ですから、ある時期、あるいは昼間に、フル稼働していたのかもしれません。


頭上には名月。


月光を浴びた水車は、稼働しているときの溌剌とした騒々しさとは打って変わって寒々と静止している、そういう像ですね、この句の描き出しているのは。


が、ちょっと待ってください。


「汲まぬ」これ、否定表現ですよね。


否定の表現については、以前お話ししました。


「机の上にパソコンがない」という絵が描けるだろうか、という話です。


もちろん、描けやしません。


描けるのは単なる「机の絵」ですよね。


そこにパソコンがあったのを知っている、もしくはパソコンがあればいいなと思っている者のみが、この「机の絵」を「机の上にパソコンがない」と解することができるのです。


「汲まぬ」も同じです。


言水は、水車が水を汲んでいたのを知っていた、もしくは、いま停止している水車が水を汲んで動いてほしかった、のではないでしょうか。


「汲まぬも」の「も」は、眼前の静止状態の水車もいいが、月光に輝く水しぶきをあげながら力強く回転する水車もやはりいいものだと、そういう「も」なのではないでしょうか。


どちらも、名月の光を浴びれば、寒々と美しいだろうと‥。


そうなんです、きっとそうです。


言水は、眼前の静止した水車に、稼働しつつある水車を重ね描いていたのです。


「名月や汲まぬもさむき水車」は、そういう像を描き出しているのではないでしょうかねぇ。


スゥッ・・・(ーoー)y゜゜゜