アメリカ大使館が主催するイベントは、勉強になるだけでなく、ネットワークを広げるのにも有効です。1年半前、「ダイバーシティの強み~米国経済と社会:労働力の多様性による利益~」という講演会に参加しました。バージニア大学学長のテレサ・サリバンさんが、どんなにダイバーシティをすすめても、どんなにアファーマティブアクション(日本でいうポジティブアクション)をとっても、まだまだ大学に多様性が足りないとお話されていました。その講演を聞いていたのは、ほとんどが企業人(管理職っぽい)で、多くは外資系企業のひとでした。年齢層も全体的に高め。数名のひとが流ちょうな英語で質問し、その内容は、「日本ではこんなに遅れているがアメリカではどうか?」「わたしは米系企業で働いているが本国での推進策の今後はどうなるか?」などでした。そんななか、一番後ろの席から挙手して質問をした若い女性がひとり。北九州からはるばる東京にこの講演を聞きに来ていた20代後半のKさんでした。電動車いすで会場の一番後ろにいた彼女は、時間通りに来たものの、会場への道がわからず、おまけに会場入り口の階段で入れず、講演の大半を聞き逃したことを詫び、自分がダイバーシティについて感じていることを具体的に述べました。講演会が終了する間際だったこともあり、サリバンさんは後で個別で話そうと言いました。講演会が終了し、サリバンさんのところに名刺交換と挨拶を希望するひとが並びました。サリバンさんは、「後ろでさっきの女性が待っているから」といっていましたが、50名ほどが密集した会場で人混みをかきわけて歩くたびに、名刺交換のひとが遮るため、なかなか進めませんでした。そうこうするうち、大使館のひとがサリバンさんを控室に案内しようとしたのですが、サリバンさんは踵を返し、Kさんを自分の元に呼び寄せました。二人の距離は約5メートル、しかし椅子が並んでいて、電動車いすですぐには行けません。会場の参加者たちは、それぞれ出口に急いでいましたので、ちょうどそれに逆行する動きでした。ようやく会ったふたり。サリバンさんはKさんの話を傾聴し、自信を与えていました。これがD&Iであり、まだ足りないと言っていた学長の態度なのだと納得しました。参加者がKさんと話したそうにしているサリバンさんに名刺を持って殺到していた姿には落胆しましたが。
Kさんが、自分自身のおかれた環境をみなの前で話し、率直に意見を求めていたその姿に、アンジャナの姿が重なりました。わたしの知らないところで、アンジャナもこういう状況になっているのだろうか、そう思うと胸が痛くなりました。帰り道、Kさんと一緒にビルを出ました。すっかりイベントが終了した最後の退出者になってしまっていました。件の会場入り口階段を降りるには、わたしの力だけでは電動車いすを持ち上げられません。大使館の警備のひとは手伝いたいけれど職場を離れられないと言い、途方に暮れていました。ちょうどそこへ、大使館の職員の管理職男性が帰宅しようと通りかかりました。わたしたちの状況を説明するまでもなく察知し、もう一人警備員を呼び、ふたりで車いすを降ろしてくれました。これもまたD&Iでした。
昨日、Kさんと久しぶりに会いました。彼女はひとりで東京ディズニーシーへ来ていたらしく、北九州に戻る前に、わたしに会ってくれました。楽しそうに今の仕事のことを話してくれる彼女を見て、わたしはこの1年半で彼女ほどの成長をしていないと反省。。Kさんの話で特に印象的だったのは、「もっとゆるくてもいいのではないか」ってことです。障害者が福祉を学び、活動して叫ぶことは大変重要なことですが、なかにはゆるく生きるひともいたっていいのではないか。これはわたしがよく言う、「高い志がなくてもいい」という考えと重なりました。これも多様性かな。
結局のところ、行動することが大切だと思っています。どれだけD&Iの歴史を学んでも、調査分析しても、偉そうなことを言えても、行動やふるまいがなかったら、何も変わらない。だからこそ、目の前の小さなことをしていきたいんですよね。
KITTEには大きなクリスマスツリーが飾られていました。ライトが切り替わったりして美しいですよ。
あと3週間ほどでネパールツアーです。という肝心なときに、アンジャナはスマホを紛失しました。結果的に1日で見つかったのですが、ものを大切にする文化がネパールには少々足りないように思っています。それがネパールなのだ、といえばそれまでですが、ものを大切にする心とふるまいを、日本からネパールに持っていきたいと思っています。
北九州の女性と話して、ネパールを思いだす
わたしは今日も本気です。あ、はい、元気です。
