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ウーゴズ・ブログ|kumaのブログ(アート編)

美術館向けの展覧会企画に携わってきたKuma氏が語るアートのつれづれ。

Kumaが運営するギャラリー・ウーゴズ 南青山で藤田嗣治 の版画展が開催中です。
(版画展と銘打っていますが、実は素描も数点展示されています)

藤田嗣治(洗礼名、レオナール・フジタ)の愛した小さきものたちといえば、猫と子供たちです。今回の展示されている藤田の自画像にも、猫がしっかり顔を出しています。





 そして、「猫を抱く少女」では、藤田の描く独特の表情をした少女像と絶妙の筆致で描かれた満足げな猫のゴールデンコンビ(?)。







 戦後追われるよう日本を離れた藤田はフランスを永住の地と決め、フランス国籍を取得し、君代夫人とともにカトリックの洗礼を受け、レオナール・フジタとなりました。彼の洗礼名レオナールは尊敬するレオナルド(・ダ・ヴィンチ)のフランス語読みです。



 フランスを永住の地と決めた藤田は晩年夥しいかずの子供の絵を描いています。彼が描いたのは、単に可愛らしさを強調した子どもの像ではなく、おでこが広く、釣り目で、おちょぼ口をして、決して笑わず、なぜが大人の世界の住人として独特な子どもワールドを創出しています。

これらの子どもたちはどこか現代アートの騎手、奈良美智の描く不機嫌そうな子どもたとも共通する資質がありそうです。



 そんな子どもたちの不思議ワールドの典型が「小さな職人たち」のシリーズです。当時のパリで日常的に見られた職人仕事を小さな子どもたちが精一杯行っている姿は、単に子どもが演じる大人の世界といった表現ではなく、我々に複合的な意味を持って問いかけてくるものがあります。
















Kumaが運営するギャラリー・ウーゴズ 南青山 次回展覧会のご案内です。

                                       藤田嗣治 版画展


                             —少女や猫、フジタの愛した小さきものたち—


                                 2013年2月9日[土]~2月23日[土]




魅せられし河:サン・フィリップ協会
1951年 銅版 315部 33 x 24 cm

世界で最初に認められた日本人画家、藤田嗣治(1886~1968)——フランスでは油彩だけでなく版画にも優れた画家の事を敬意を込めて「パントル・グラヴァール (画家にして版画家)」と呼びますが、藤田はまさにこの呼び名にふさわしい芸術家でした。


  ◎エコール・ド・パリの画家、藤田嗣治(洗礼名:レオナール・フタ:1886~1968):


 今日では村上隆や奈良美智、草間彌生などインターナショナルに大活躍する日本人アーティストが輩出していますが、つい最近まで世界的に通用した日本人画家と言えば、藤田嗣治(洗礼名レオナール・フジタ:1886~1968)ただひとりだけでした。彼は第一世界大戦前後から狂乱と祝祭の日々に明け暮れたパリで、モディリアーニやキスリング、パスキン、シャガールなどとともに、エコール・ド・パリの一員として確固たる地位を築きます。


 にもかかわらず、藤田は日本の洋画史においては長い間正当な評価をされませんでした。極端に言えば、世界が認めたのに日本では認められていない、そんな不思議な扱いをされてきたのです。そして著作権の問題もあり、その知名度に反して長い間展覧会が開かれず、一時はこのままでは藤田は忘れ去られてしまうのではと危惧されたこともありました。


 しかし、2006年に生誕120周年を記念する展覧会東京と京都の国立近代美術館で開催されてからは、2008年に没後40年の記念展が全国9カ所を巡回するなど、その再評価が順調に進んでいます。また、2011年に箱根のポーラ美術館で開かれた展覧会では、長い間謎とされてきた藤田のいわゆる「すばらしき乳白色の下地 — グラン・フォン・ブラン (grand fondblanc)」の制作にたってはベビーパウダーの「シッカロール」(和光堂)が使われていたとういうことも判明しました。



   ◎パントル・グラヴァール(画家にして版画家)と呼ばれた芸術家・藤田


 2013年は藤田の渡仏100周年の節目を迎え、今後も藤田の紹介と研究はますます進んでいくと思われますが、彼の作品の最大の魅力は何と言ってもその線描にあります。日本の美意識にもとづいて、伝統的な弾力のある線で柔軟な形を、西欧の絵画技術である油絵本来の堅牢なマチエールにのせて表現することに成功したのが藤田の作品です。彼はこの線描を端的に活かせる表現手段として、1920年代中頃からは版画制作にも力を注ぎ始めます。そして、晩年に到るまで銅版画や石版画(リトグラフ)など多種多様な版画芸術の世界を表現し続けました。


 フランスでは版画にも優れた画家のことを、敬意を込めて「パントル・グラヴァール(画家にして版画家)」と呼びますが、彼はまさしくこの呼び名にふさわしい芸術家だったのです。


 
 本展では、君代夫人旧蔵の作品を含む、藤田の線描の魅力溢れる版画20余点を展示販売します。少女や猫など、藤田が愛した小さきものたちを描いた多彩な線描の世界をご鑑賞いただければ幸いです。



少女の肖像(君代夫人コレクション)

1964年 リトグラフ 100部 21x13cm



































モノタイプ一般



 モノタイプとはガラス、アクリル、金属板など吸収性のない面に、油性インクや油絵の具などで直接絵を描き、その上に紙を当てバレンなどで圧力をかけて絵を写しとる技法です。したがって、基本的には、一つの版から一作品しか作れません。版画の一技法として分類されていますが、一つの版から同じ作品を複数制作する他の版画とは大きく異なっています。複数芸術が版画の要件とするなら、モノタイプは版画というよりは転写技法による絵画と考えた方が正しいかも知れません。



 では、なぜわざわざ一枚しか作れないモノタイプを制作するのかというと、圧力をかけて転写することにより、直接紙などの支持体に描くのと違って、作者が意図しきれない偶発的な効果が得られるからです。



 ドガはこのモノタイプの実験的な作品を多く作った画家として有名です。また、彼のパステル画の中にはモノタイプで下絵を制作したものが数多く残っています。



ハンス・イヌメのモノタイプ (トランスファー技法)



 イヌメの絵画に登場する動物たちはキャンバスに直接描かれたものではありません。彼はまず黒色(+茶色)の油性絵の具をガラスの板に絞り出し、ローラーでこれを均一にのばします。その上に紙をのせ、紙の上から描画を行うことで、絵柄を紙へ転写します。これも、モノタイプ技法のひとつで、トランスファー技法(転写法)と呼ばれています。



 絵柄を転写するので、得られた絵柄は左右が逆版になります。彼はそれを計算して紙の上に左右逆にデッサンして行くのです。絵柄に文字を入れ込む場合は左右逆の鏡面文字のように描いていきます。



 では、彼はなぜこのようにある意味面倒な工程を増やしているのでしょうか? それは、あえて工程を増やし、手描きだけでは得られない偶発的効果により、ドローイングが習慣化し手慣れた線描に陥ることを避けたいからにほかなりません。いわば、作者のコントロールできないチャンス・オペレーションの導入を諮っているのです。そうすることにより、類型化された動物たちに微妙に異なる個性を付与することをねらっているのです。