さかしら伊呂波50撰(2)「き」 吉次郎 | ouroboros-34のブログ

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ごうなっだのでありますぐるらめ。

[き] 吉次郎丈
吉次郎 節回しよき 船乗りの
  竝ぶ木(なぶき)よし浜 師風ら七騎
 
 きちじらう ふしまはしよき ふなのりの 
   なぶきよしはま しふうらしちき

———歌舞伎集団「前進座」の吉次郎の芝居を観た。舟歌のシーンには感動した。第二世代の七人幹部が見事な舞台を作っていた。《五重塔》の「のっそり十兵衛」の飄飄とした名演技を思い出したのだった。 

吉次郎(きちじろう):村田吉次郎。前進座歌舞伎俳優。《五重塔》(幸田露伴原作)ののっそり十兵衛が素晴らしかった。堀川波の鼓』の彦九郎、『阿部一族』の弥五兵衛、『東海道四谷怪談』の宅悦、『夕鶴』の惣ど、『五重塔』の十兵衛。
竝ぶ木(なぶき):並ぶ(なぶ)動詞下二段。並べる。つらねる。ここでは「松並木」。
師風(しふう)。師と仰ぐ人の芸風。至芸。

腕はあるが愚鈍な性格から世間から軽んじられる「のっそり」こと大工の十兵衛。谷中(やなか)感応寺に五重塔が建立(こんりゅう)されることを聞いたとき、その仕事をやりたいという熱望が生じ朗円上人に会いに行く。本来ならば、感応寺の御用を務める川越の源太が請け負うはずだった。十兵衛は日頃から源太の世話になっていた。その源太と争うことになったのだ。 

さかしら「伊呂波50撰」と称して、さかしまに詠んでもまともに詠むのと同文になる「回文短歌」を作っています。去年のサモトラケのニケで中断していましたが、どうやら暇ができたので再開します。イロハを冠(かんむり)と沓(くつ)に読み込んで(今日は「き」)偉人をテーマにイロハ順に50人の、ふた回り中、です。今日は前進座の名優吉次郎をとりあげました。
できることなら吉次郎丈に見てもらいたいものです。

明けましておめでとうございます。