句解29霽・三ケ月の
芥子(けし)のひとへに名をこぼす禅(ぜん) (前句再出)
三ケ月(みかづき)の東は暗く鐘の声 芭蕉
三ケ月(みかづき):三日月。陰暦で3日の夜に出る細い弓形の月。また、その前後の、月齢の若い月。季 秋。眉月(まゆづき、びげつ)、蛾(が)眉(び)、繊(せん)月(げつ)などとも言う。三日月より早い二日(ふつか)の月はほとんど見ることができず、三日月は最初に見える月であるため、新月(しんげつ、ただし現在は朔(さく)の同義語に使う)、初月(はつづき、しょげつ)などとも言う。他にも多くの異名がある。
三日月の黄経は太陽よりわずかしか先行していないため、三日月は日没のすぐ後(約2時間後)に、光っている側を下(北半球では右下、南半球では左下)にして沈む。いっぽう、三日月の出は日の出のすぐ後であるため、見ることは難しい。
以上、ネットから。
「お月(つき)様」は1日の月のことを「朔(さく)/新月」といい、2日の月を「既朔(きさく)」、3日目を「三日月」、あと7-8日を「上弦」、あといろいろな呼び名があって22-23日「下弦」、29-30日「晦(つごもり)」(「晦冥(かいめい)」の「カイ」。暗いという意味ですね)というそうです。満朔の見える唯一の天体なので愛着があるのですね。
三日月はイスラムでは国旗に紋章として欠かせません。フランス語ではクロワッサン、これはおいしい月ですね。
そこで芭蕉の句〈三ケ月の東は暗く鐘の声〉ですが、どういう景なのでしょうね。太陽が沈んだ後追いかけてすぐ月も沈みます。三日月が中空に残っているわけではないのです。月は東に日は西に、というわけにはいかないのです、三日月の東どころか全天に星がきらめく暗さなのです。むしろ「鐘の声が暗い」と読み取るべきではないでしょうか。入相(いりあい)の(の)鐘(かね)(「いりあい」は日の沈むころ、の意)は、日暮れ時に寺でつく鐘。また、その音。晩鐘。ですから暗いのです。
前句〈芥子のひとへに名をこぼす禅〉との付は、「ひとへ」が「一重」の意味から変わり「ひとへに(偏に)」となって、「もっぱら」「いちずに」の意をとり、継ぐ句のイメージを構成します。
———三日月が心細げに懸っている。東のほうで入相のかねが殷々(いんいん)と籠り唯々(ただただ)暗い。
この暗さは芭蕉が杜国の心象を推し量ったものではないでしょうか。名月を愛でない暗い風変わりな「月ノ座」でした。
字句は「秌湖(しうこ)」です。秌」は「秋」のヘンとツクリをいれかえたもので、意味は変わりません。
三ケ月(みかづき)の東は暗く鐘の声 (前句再出)
秌湖かすかに琴かへす者 野水
ここでは「琴かへす」の解釈が大問題になりました。どういういみでしょうか?