歌仙「霽の巻」の句解を試みました。(その14) | ouroboros-34のブログ

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こころに映りゆく由無しごとを其処は可となく書き付けて
ごうなっだのでありますぐるらめ。

句解14霽・命婦の君

  しのぶまのわざとて雛を作り居る  (前句再出)
  命婦の君より米なんどこす      重五

命婦(みょうぶ):①律令制下の婦人の官位の称号。のち女官の総称になった。②稲荷の神の使いである狐の異名。
「米なんど」。米等(など)といえば米や芋や野菜などなどというように、ひとつ採り上げて例示すること。「なんど」は軽んじて扱う気持ちがあります。シャネルの香水ならともかく、米は実用品(日用品)の最右翼、スーパーの米なんか贈答品にするのは非礼に当たります、という感じです。
もともとは、「なんど」は「なにと」の転で「など」に変わる一つ手前の形です。つまりバカにする意味はありませんでした。現代では「なんど」そのものが消失して「など」のなかに軽蔑する気分が残っています。
「こす」。遺す。寄越(よこ)す。おこす。渡す。

前句「しのぶまの」が源氏物語を下敷きにしているヒントとして出している「末摘花」で「命婦」がありました。
「雛人形をつくっていますよ」とごまかしながら実際はこっそり付文を清書していたという前句を想い出してください。
命婦の仕えている末摘花の君は生真面目で実直ですが、気の利かないことおびただしいと来ています。
恋文に折り鶴など添えて命婦に持たせたのに貧乏を同情したかのように食品を少し返して持たせたのでした。
自身が零落して手元不如意の暗示だったのかな。見事な恋離れの一幕でした。

———なんじゃい、こりゃあ…。苦心して書いたラブレターを送ったら、インスタントラーメンが来たよ。色よりメシってかい。頭の中将、チャチャを入れやがったな。

さて、次は
   まがきまで津波の水にくづれ行    荷兮

「米」を送ってよこした、という句に付けたのが、このツナミの句です。誰でも救援米のことだと思うでしょうね。