時雨るるを鏡の三日か折るる櫛
———しぐるるをかがみのみかかをるるくし /
時雨も風情があるが、三日も続くと気持ちが塞いでくる。毎日鏡を眺めていて櫛も歯を欠いてしまった。
●木場時雨巴の絵もとレクシ函
———こばしぐれともゑのゑもとれくしばこ
木場(こば):伐採した木材を集積しておく山間の狭い平地。
時雨(しぐれ):最大重要季語。冬の始まりを示す、通り雨。
巴(ともゑ):風に揉まれて渦を巻いているかたち。
レクシ:ロラン・バルトの『記号学の冒険』にあるテクスト分析で文章を細片化して検討する手法で、この細片を「読書単位(レクシ)」という。
函(はこ):ファイル
木場では時折、時雨が木っ端のうずを巻いている。掌編《部分日蝕》のテクスト分析を試みる。挿絵も添えて《部分日蝕》のテクスト分析中のファイルの中も、レクシが冬の螺旋を巻いている。