裏岸さ鶲の来た日座敷牢
———うらきしさひたきのきたひざしきらう
裏木戸の岸にヒタキが来て囀っていた日、わたしは座敷牢に籠っていたのだった。
裏岸さ:「さ」は、方向を示す【格助詞】。
鶲(ひたき):ジョウビタキ(鏽赤色の下半身と尾に翼は黒に白い斑がある)・ルリビタキ・キビタキなど美しい鳥。火打石を打つように鳴くのでこの名がある。火焼。
自らの意志で対外接触を断つ。つまり、「ひきこもり」。座敷牢の現代版ですが、このひとたちは自分の確固たる信念を持っている優秀な奇人なので、相当な理論武装をして説得に当たらなければなりません。でれでれし母親的感情で対処しようとしてもなんの効果もありません。
われわれ自身が目に見えない座敷牢から出ようとしないではありませんか。他人事ではない。
イプセンのノラは、ブリッコを、乃木坂という座敷牢を「自らの意志で」脱走したのです。わたしたちも家に安住することなく自分の城から脱出すべきです。
―――と、わたしは今、自分自身に腹をたてています。