第181回俳句ポスト365兼題「鰭酒」には次の12句を出しました。
もう何回か応募しつづけていると、みんなの考えにおおよその見当がつくようになりました。
今回も、琥珀色・青い炎・海・父・自慢話・愚痴・うんちく・帰り道・宿…などに溢れてました。
こういう環境の中でヒトが思いつかない奇抜な題材を拾うことがこの俳句コンクールのミソとなります。
さてウロは、ありきたりの古い「花鳥風月」から離れた、さりとて川柳ではない「俳句」表現をどのようにこころみたんでしょうか。
死体検証の科捜研の女…ってわけですが、まあ、ご覧ください。
●鰭酒や出土人骨黙らせる
このところ、ウロは、「出土人骨」というコトバが気に入って、あちらこちらの句会に出しています。ここでも20句作りましたが、そのうちのピカいちです。人骨がヒレ酒の力を借りてしゃべりだすのは、自慢話・愚痴・うんちくのいずれでしょうか、詠み人知らず。
●鰭酒やすっきりわかる胃のかたち
酒がうまい、という表現のひとつに、五臓六腑に染み渡る、がありますが、その応用です。
●鰭酒やゴンドラの唄綱軋む
酒を飲むと歌、ですね。ちょっと姑息だったかな? ゴンドラ? いやあ、別に深いイミはありません。見逃してください。
●鰭酒の鼾に残るひれの音
この句をオノマトペにしたくが次の句。
●ひれ酒やぱしゃりぱしゃりといふ鼾
夏井いつきせんせいが好きなオノマトペです。一遍、選に入ったことがあり、必ずひとつはココロミルことにしています。
これも今回いろいろ作りましたよ。
「鰭の海面をたたく音」と「いびき」に共通するような音から考案しました。
オノマトペ(擬音・擬声)は、マンガやこどもの絵本に盛んに使われます。
そのせいか、考えるのが、殊の外、楽しいのです。句作を離れても、この魅力には憑りつかれそうです。
●ひれ酒や夢にのどけし紙魚(しみ)の鰭
率直に言って自分でもイミワカンナ~イ句です。
それじゃ無責任ですから、無理にこじつけると、鰭酒をヤって転寝をしている。ひろげた本は古本なのでシミが居る。シミは「紙の魚」と書くのでウロコがあるはずだ。ヨダレの海の中をシミが泳いでいるそのウロコを酒に仕込んで飲むと眠くなってヨダレを食ってそれが本に染みを作って…
エンドレス・・・疲れたってば…
●鰭酒や琥珀の闇に放火せり
昭和の燐寸で火を着けるのが多かったですね。これは多かった。予想通りだった。
そこで裏かいて放火セリとしたのがこの句のミソ。推理ドラマの見過ぎ、かな?、
●鰭酒やニッポンジンの猿酒(ましらざけ)
昨今のニホン国を見ているとまるでサルの集団、とまでは言わないけど、あ、言っちゃってる。ま。そういうこと。
●ひれ酒や名前きかないままだった 「人」位選
鰭酒のハナシに夢中になって、つい、相席のお客さんとは互いに名前を聞かないままだったことに別れてから気づいたってこと。そんなことってあるよね。人生の機微、ですよね。
●ひれ酒をささくれの指にもすこし
空気が乾燥すると、さかむけ(爪の生え際が剥けてくる)になります。それでそこをアルコール消毒したというはなし。
●鰭酒や海と利き酒きくごとし
今回投句が一番多かった「海」との取り合わせです。つまらないですかねえ。
●鰭酒や見る嗅ぐ含む泳がせる
俳句の指南書には、動詞は、一句のなかに、せいぜい2個まで、とありますが、ここでは4個も入っています。季語を除いては、動詞のみで出来上がっている句です。
果敢な実験も試みて信を問うているのでアリマス。結果はペケだったけど…
最後まで見てくださったヒト、ありがとうございました。
風邪など召さないように……お健やかに……