わが影のいづち中天炎上す
このクソ暑さはどうしたことだ。やっと自販機にたどりつく。
あと十円財布まさぐる暑さかな
片陰に寄ってアイスキャンディーをしゃぶる。舌さきがじいんとしびれる。
氷旗を立てたクーラーボックスを開けるとき溢れ出た霧がひんやりと頬をなでる。麦藁帽のおじさんが思い出したようにカランカランと鐘を鳴らす。フラスキン入り一本5円。アイスキャンディー売りが自転車を押して来た昔の風景。
おっ、当たり!
これもたのしみのひとつ、アイスの棒に「あたり」の焼き印があればもう1本貰えるのだ。
黒い印字だったと思っていたがこれは赤だった。2本もらえるのかもしれない。きれいに舐めて胸ポケットに挿す。
夕方の凪の暑さはこれまたどうしたことだ。
外回りのときのアイス棒をアパートの近くの煙草屋にもちこむ。
ここの店ではなにも買ったことはないからおまけをくれるかどうか心許なかったが、婆さんはじろりと見ただけで電気保冷庫から1本くれた。
1本しかくれなかったので「赤だよ」というと「そうだよ。大当たりだよ」といっただけだった。
アイスを食べた晩、上げたり下げたりして腹痛で転げまわった。
大当りだった。