グレート・ギャツビー - スコット・フィッツジェラルド | Oumi Blog

Oumi Blog

面白かったDVDとか本とか。はみだしもあるよ。

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)
Francis Scott Fitzgerald 村上 春樹

中央公論新社 2006-11
売り上げランキング : 629

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

90年近くも前の古典アメリカ文学です。昨年DVDを観たので、原作をと思いつつ、やっと読むことができました。主人公の若い男の視点からみた大富豪ギャツビーの生き様を紹介する形で物語が綴られていきます。主人公は、若い証券マン。ニューヨークに近い東海岸に住んでいるのですが、となりに大豪邸があり、そこがまさしくギャツビーの邸宅。夜な夜な金を湯水のように使う贅を凝らしたパーティー(というかドンチャン騒ぎ)が催され、主人公とその友人夫婦も参加することになります。それから、ギャツビーと主人公の奇妙な友好がはじまるのですが、主人公はあくまでも脇役の立ち回り。話の展開とともに、ギャツビーと友人の奥さんの間に存在する、ある関係から、ストーリーが急展開していきます。

第一次大戦直後の好景気なアメリカ文化での大富豪の暮らしぶりという絢爛豪華な表舞台と、その裏での普遍的な男女の愛憎劇が織り合わされ、なんとも不思議な感覚をかもしだしています。90年前のアメリカという時間も距離も遠く離れたところでのストーリーと、独特の文体のせいか、時々雲をつかむような感じになって、核心がぼうっと霞んでいるような感覚になります。これが良い味(アクセント)になっていて、現代の直接的描写とは対極的な詩的雰囲気を楽しむことができます。主題は喪失や崩壊といったところですが、爽やかな感じがするのは、村上春樹の訳だからでしょうか。

最近、新作の小説よりも古典のほうが肌にあうような感じがします。物語のテンポが速くなっていく傾向も行き着くとこまでいってしまって、ついていけなくなってきてるような。その揺り戻しで、本作のようなゆったりとした流れが心地よいのかもしれません。

<はみだしblog>
428を渋谷と読ませるDVDがあるけど、最初みたとき「四谷」と読んでしまった。