芭蕉と其角のあいだの斜め下には、
各務支考(かがみ しこう)が座している。
句は、
叱られて 次の間へ出る 寒さかな
芭蕉の死の前日、
すなわち元禄7年(1694)10月11日、
門弟たちが芭蕉の病床に詰め、それぞれが夜伽の句を詠んだ。
これは、そのうちの一句である。
支考は、病床に臥した芭蕉の看護に尽くすなかで、
時に芭蕉に叱られたことを詠んだ句とされている。
ただ、この句の背景には、
支考が子どもの頃に、父を失い、
禅刹大智寺(岐阜市)に小僧として預けられた思い出が
重なる部分もあったのではなかろうか。
26才での蕉門入り前、
19才で還俗しているが、
僧形に描かれるのも、こうした経歴からであろう。