昨日は午前中から落ち着かず

ベランダに出ては煙草を吸い

コ-ヒ-もポットに落とし

いつ出掛けても良いようには

していた。

 

少し早めに家を出た僕は

吉祥寺でバインミ-を買う予定で

駅を降りたら折角だから

とても日差しの良い午後だったので

井の頭公園で日向ぼっこしようと

歩いて行った。

 

池の周りのベンチを見つけ

太陽と池と通りゆく人たちを

ぼんやり。本当にぼんやり眺めていた。

 

8年間今日という日のために

過ごしてきたようなものだったと

静かに湖面のきらめきを感じ

あの日の事を思い出していた。

 

リオデジャネイロオリンピックの予選

大阪のキンチョウスタジアムの

セントラル開催でホームのはずの日本

だがスタンドはガラガラでアウェ-チ-ムの

応援の声の方が響き渡り

なんでこんなことになってるんだと

テレビを見ながら残念な気持ちで

負けた試合を見ていた。

 

女子サッカ-は攻撃の応酬で

見ている僕はとても面白かった。

 

そうだ、なでしこリ-グを生で観ようと

心に決めてその年の開幕戦を

西が丘競技場のベレ-ザ対レッズのカード

手始めに見に行ってみた。

 

面白い。

 

どちらを応援するでもなくいってたので

選手の動きをイ-ブンに見ていたのだけど

レッズの15番の切れの良いプレ-が

その中でも光って見えた。

試合は引き分けだったのだけど

試合前に購入した選手名鑑でその選手を

見つけるとこんなに素敵な顔なんだと

今の世じゃそれだけでもセクハラ扱いの

事かもしれないけれど素直にそう思った。

 

競技場を後にしながらこれからレッズの

試合を見に行こうと決めていた。

レッズの15番17番19番21番23番は

僕の息子と同い年でそれも応援したい理由

自分の子の成長と選手の成長が

これから大人になっていく過程と曲折を

見つめていきたいと思っていた。

 

それが60歳を迎えようとしていた僕が

なにか打ち込める何かを探していた答えだった。

 

レッズの15番は北川選手。

それからはチームを応援しながらも

彼女のプレ-を中心に見ていた。

その年は降格争いだったけど

U20では何とか3位までたどり着いた。

 

 

昨日の午後は本当に2月とは思えないような

日差しの暖かい申し分のない午後だった。

 

 

あれから左サイドバックを担当していた

彼女は才能は勿論あるのだけど

持ち味が生きないプレ-を何年も続けたが

レッズ-アルビレックス―アイナックと

チ-ムが変わった今年転機が生まれた。

 

カップ戦では4バックで戦っていたのが

リ-グが始まると3バックを採用して

彼女が一列前で戦えるようになったのだ。

このシ-ズンに入ってからは

持ち味の判断の早い攻撃的なプレ-が

彼女を蘇らせた。

 

今回のパリオリンピックの最終予選

国立競技場なら見に行けると

Fの分もチケットを取り

いまのなでしこを見に行こうと

決めていた。

 

有力選手の怪我が相次ぎ不安だったのだが

代わりに召集されたのが北川選手だった。

 

これは見に行くしかないでしょ!

もうチケットは買ってあったけど。

 

僕はあの初めて見た時から

北川選手がなでしこで活躍するのを

願っていたし信じていた。

 

最初の頃アイスランドの選手のアンフェアな

タックルで怪我をしてしまったのが

尾を引いてしまったのか

リ-グでしか見ることは無くなっていた。

 

昨日の試合ウォ-ミングアップのメンバ-

スタ-トから出る選手の方に彼女はいた。

 

まさか4バックの左だと活きないなと

監督の采配を心配していた。

 

 

スタジアムには早く着いてしまって

やはり北朝鮮の大応援団が目立つ景色で

どれくらいのファンがスタジアムに来るか

不安半分で見ていると後から来たFが

スタンドの周りすごい人が集まってると

心強い一言が聞けて少しほっとした。

 

バインミ-とポットのコ-ヒ-で

すでに冷え込んでいたスタジアムの席で

簡単に夕ご飯を済ませ

キックオフを待っていた。

 

監督は3バックを採用して

その前に長谷川と長野

左に北川、右に清水と僕の想定では

一番確かな布陣でスタ-トしてくれた。

 

ベンチには頼りになる選手もいる。

 

チケットは発売初日に手に入れていたので

バックスタンドほぼセンタ-の一番見やすい席。

乱視の僕は逆サイドの選手の識別が怪しいが

この席なら申し分ない。

 

北朝鮮の選手は上手いし出足が鋭い

日本の選手も負けてはいない

一進一退の痺れるような展開で

時計は進んでいった。

 

北川はプレ-スキックのチャンス2回とも

素晴らしいボ-ルを入れて2回目に高橋が

混線の中仕留めた。

 

それで潮目が変わったように北朝鮮は攻めてくる。

体を張って守る。

 

これはサッカ-という闘いなんだと言う

本当に息もつけない素晴らしい試合。

 

前半終了寸前の山下の信じられない好セーブ

僕の席からは入ったのか入らなかったのか

判らない位、際どいプレ-だった。

 

ハ-フタイムにコ-ヒ-飲もうと注ぐと

手が震えて上手くいかなかった。

寒さのせいだけでは無かった。

 

後半が始まりまた圧力をかけてくる北朝鮮

Fともう一点が欲しいねと話していたが

そんな一進一退の試合を動かしたのは

長野の彼女にしか出せないようなパスだった。

藤野が落としたボ-ルをワンタッチで右サイドへ

走りこんだ清水が相手をかわしてラストパス

前へと詰めていた藤野がどんぴしゃりのヘッド。

 

これでやっと安心できるかと思ったのだが

そんなに甘くなかった。

やはり北朝鮮はタフだし技術もある。

一点返されあと10分くらいあったか。

 

手に汗握る試合を落ち着かせたのは

交代で入った選手達だった。

体を張りボールをキ-プし

痺れるような試合もタイムアップ。

 

スタンドは総立ちで拍手を送る。

寒いので手袋してるせいか音はそれ程でも

 

 

良い試合を見れた。

何といっても8年前から見続けてきた

北川をはじめとした、なでしこの選手

ハ-トのこもった頭の回転の良いプレ-

随所に見ることが出来た。

 

あの時60歳目前だった僕も

いまじゃ70も見えて来ようと言う歳。

まあ満員にはならなかったけれど

それでも2万人を超えるサポ-タ-が

見つめる中で大切な試合を行えたことに

本当に嬉しい気持ちでいっぱいだった。

 

女子サッカ-はWEリ-グが今週末から

再開される。

僕は超満員のスタンドで

選手の躍動するのを見てみたい。

そして今日のようにゴ-ルが決まれば

叫ぶだろう。

 

最後に北朝鮮の監督・選手

フェアで素晴らしい試合をありがとう。