地球温暖化が進んでいるのは間違いない。

世界中の定点観測ポイントにおける気温のデータは、年による振幅はあるものの、総じて長期的な上昇傾向を示している。

これにはCO2だけでなく、メタンやフロンなど、様々な温室効果ガスの大気中濃度の増加が主因だと言われる。


温暖化の影響は、ここ数年急に身近に感じられるようになった気がする。

夏には熱帯のような局地的ゲリラ豪雨が当たり前になり、西日本の冬は雪が積もりにくくなった。

暖地性の虫の分布がどんどん北上し、身近な生物相が急激に変わってきている。

かつて温州ミカンの産地が凍害で壊滅して別の作物に変えてしまったような所で、今はレモンが普通に作られている。逆に米なんかは北陸でも高温害が問題になる。

海外に目を向けると、太平洋の島国が沈みそうになったり、氷河や氷床が大規模に溶けてなくなったり、事態は深刻化している。

そのため、温暖化防止対策が国際会議などで議論されている。これが今の現実だ。


さて、このような温暖化防止対策に対して異議を唱える声は当然ある。

その主張は主な以下の3つに分けられる。


①地球温暖化は世界を巻き込んだ狂言であり、世界を支配しようとするどこかの陰謀論団体が裏で糸を引いている。


②地球温暖化は起こっているが、温室効果ガスは無関係である。


③地球温暖化は起こっており、それは温室効果ガスのせいだが、将来来るかも知れない氷河期を防止するのにむしろ役立つ。


①は論外過ぎるので無視しよう。

考えるべきは②と③だ。

まず②について。

地球温暖化の原因は、温室効果ガスの濃度上昇ではないのだろうか?

反対派は、今の排出量と濃度では温室効果なんて起こらないと主張する。

ではなぜ地球の気温は上昇しているのか?


実際のところ、地球規模での温暖化実験なんてできるものではない。そういう意味では温室効果ガスによる温暖化というのは直接実証されているワケではない。

また、長期的な気候変動の原因を探るというのも容易ではない。

この星は、過去にも長いスパンで氷河期や温室期を繰り返してきたのだ。つまり、長期的に気温が上昇したり低下する自然のメカニズムが他にもある。

今たまたま自然現象としての温暖化と温室効果ガスの濃度上昇が重なっているだけなのではないのか?


なかなか説得力(?)のある説明ではあるが。(笑)

しかしこの主張は、困ったコトに現に起こっている急激な気温上昇の仕組みを説明できない。

ヒトによっては、太陽活動がどうちゃらといった「仮説」を提唱なさるが、それは温室効果ガスのようなしっかりした実証的根拠のある話ではない。

様々なシミュレーションを駆使すると、既知の自然のプロセスだけでは、20世紀以降の急激な気温上昇を計算上説明できないとされる。もちろん、それは単なる計算上の話ではあるが、これよりも説明力のある仮説がない。


先に誤解の無いように言っておくが、アカデミックな場でそういった議論をするのは一向に構わない。しかしそれは実践に移すべき話ではない。

方向転換は、十分な根拠を持って定説を覆した後にやるべきことだ。

なぜなら、温暖化の進行はアカデミックな議論を待ってくれない。ダラダラと結論を先延ばしにしているウチに手遅れになるというのは最悪だ。


何かの問題が進行しており、それを止めなければいけないと考えるのであれば、例えその原因を確証できなくても、最もあり得る原因を想定して何とかしようとするものだ。

色んな仮説を提唱するのは構わないが、それは大きな声で宣伝するようなコトではない。

なぜなら、「温暖化は自然のプロセス」説が正しかったとして、その温暖化を止めるためにできる事は何もないからだ。太陽活動やら地球の公転軌道のズレなんてどうしようもない。

その主張は純粋な科学的議論の場でやればいいだけの話だ。


しかし、なぜかこの手の反対論者からは、「国際会議で相手にして貰えない」的な恨言や、「温室効果ガス排出量削減なんて不要」的な主張が目に付く。

「世界が私を認めてくれない」のが気に入らないのだろうか?「世界を私の考えに従わせられない」のがイラつくのだろうか?

ここには陰謀論者的な倒錯した心理が目に付く。

陰謀論者は「陰謀によって世界が不当に操作されている」という主張を声高に宣伝することによって、世界を不当に操作しようとするものだ。


つまり実践論としては、温室効果ガス削減に取り組むのが現実的だということである。