インターネットが発達したお陰で、我々は日々色んな情報に触れている。

有名人のスキャンダルなんて、昔はテレビで話題になった「あの人」ネタくらいしか誰も知らなかった。しかし今はネット上に、聞いたこともない有名人(?)が誰と内緒でどうこうしたなどという、事実なのか空想なのかもアヤフヤなネタがたくさん転がっている。(-。-;

アメリカ大統領選挙の結果くらいは知っていたが、合衆国コロラド州デンバー在住の誰やらさんが滑って転んだ際に見事に宙返りしてしまったなんてことは知りようもなかった。(笑)


こういう、事実関係を確認できない情報は話のネタ程度に留めておいて、ファンタジーの一種として楽しんでおけばいいのだ。

イギリス在住のマクミランさんが火星人と殴り合ってどうなったかなんて、我々の現実には何の関係もない。(笑)


しかし、世の中にはそれでは済まない人が結構な率で存在するようだ。

マクミランさんが火星人と殴り合ってしまったら、次は火星人が大群を率いて襲ってくるかも知れないとか。(・_・;

どっかの医者がなんちゃら理論で死後の世界を証明してしまったので、死後の霊格を上げるためにスピリを信仰しなければいけないとか。(-。-;

「有名なジャーナリスト」がコ◯ナをどうたらしたのでワクチンを射ってはいけないとか。(ー ー;)

終いには、認めないのは愚か者とか馬鹿にする奴はしっぺ返しを食うとか、もう無茶苦茶である。σ(^_^;)


事実関係の確認がすっぽり抜け落ちた8割の空白を、推測という名の空想で埋めた言説が、インターネットミームとして自称「真理に目覚めた人」によって喧伝され、しかもそれに感染してしまう人が結構いる。

そしてそれが選挙結果にさえ影響してしまうのだ。(・_・;


このように、事実関係を確認できない情報が、井戸端会議の枠をはみ出して影響力を持ち始めると、その真理性の判断に否応なしに関わらざるを得なくなる場面がある。


少し古い話で恐縮だが、「冷凍餃子事件」というのを覚えておられるだろうか。

中国製の冷凍食品の餃子を食べた人が体調を悪くし、調べてみたら餃子から残留基準値を超えた農薬成分が検出されたという事件だ。

当時は中国との対立が拡大していた時期でもあった。

中国の農家さん(?)が畑で横一列にズラっと並んで農薬散布している動画なんかが流されて、「中国ではこんな酷いことをやっている」などと宣伝され、一時、安い中国産輸入農産物が店頭から消えたりした。


しかしここだけの話、報道で流れた農薬成分の検出濃度を聞いた時、業界の人間なら、これは畑での農薬散布のせいではなく、工場の餃子の製造工程で誰かが農薬をそのまま餃子の上にぶちまけたのだと直ぐに分かったんである。(・_・;


濃度が濃すぎる。

農作物への散布なら、作物を直ぐに収穫して測っても、こんな高濃度で検出されるなんてあり得ない。

まして、色んな材料を混ぜて加熱したりして加工された餃子である。農薬成分なんて普通は殆ど残らない。

これは野菜への不適切な農薬散布で起こった事故ではなく、誰かが悪意を持って餃子に農薬をぶちまけたのだ。


これは、その筋の人間なら誰でも簡単に判断できる話だが、もちろん世人のほとんどは「その筋の人間」ではない。

残留濃度という数字の意味するところを読み取れない人には、この事件報道は事実関係を確認できない情報であり、確認できない部分を空想で補っていたのだろう。嫌中派にとっては、これは深刻な国際問題だったに違いない。


ここで問われるのが「判断」というものだ。