さて、宇宙生物学における生物の定義の二つ目である。
自己維持する化学的システム
これは、生物学的な生物の定義の二つ目にあった、「代謝機能を持つ」とほぼ同じ話だ。
化学反応をずっと継続し続けようとしたら、反応の材料となる養分を常に供給しつつ、反応によって生成した産生物を老廃物として排出し続ける必要がある。これが代謝だ。
このような、「化学反応の束」としての化学的システムを自ら維持するには、自律的な代謝システムが必須である。
これは、生物が自分を自分として変わらずに維持する機能、すなわちホメオスタシス(恒常性)を語っている。
この二つ目の定義において、先の生物学的定義のように代謝機能を重視するのか、それとも代謝の結果として実現されるホメオスタシスを重視するのかは、議論の分かれるところであろう。
宇宙生物学においてホメオスタシスが重視されるのは、代謝自体は、実験室内でも再現可能な単なる化学反応であるからだろう。
地球以外の、生物の発生に好適そうな環境の星を探索し始めたら、未だ生物とは言えないが、その前身とも言える自律的な代謝反応の存在が確認されたりするかも知れない。
そのような場合、生物と言えるところまでは到達していないその代謝反応を、生物と区別することが求められる。
だから、「ホメオスタシスまで辿り着いてなければ生物ではない」というニュアンスで、代謝機能ではなく、自己維持が重要されているのだと考えられる。
この二つ目の定義も、結局は、最初の生物学的定義を少し厳密にしたものだということである。