少し話が逸れてしまった。(笑)

定量評価によって決定される、対象の性質の「量」は、物差を設定した時に決定される。
「赤さ」の定量評価は、カラーチャートを作った時に自動的に決定される。あとは「赤さ」の程度を知りたい対象に、その物差を当て嵌めてみるだけだ。

では、「美しさ」を測定するための、3節で論じた「お好みの宝石のグレード物差」の場合はどうだろう。長ったらしいので、以下「宝石物差」と略記する。
初めて見た未知の宝石Xがあったとする。
その宝石の美しさを測定するために、宝石物差を当て嵌めてみる。
「この宝石よりは、こっちの方が美しいな」
「あ、でもこっちよりはこっちの方が美しい」
などと暫し悩んだ末に、未知の宝石Xの「美しさ値」が測定されるだろう。

しかしここで考えてみたい。
この宝石Xの「美しさ値」は、測定するより前から決定されていたと言えるだろうか?
この宝石物差は、私が私の主観的評価に基づいて作ったものである。
その物差の「目盛」は、私が知っている宝石に基づいて刻んだ目盛であり、私が知らない宝石の美しさは、作成時には考慮されていない。
だから、宝石Xの美しさ値は、測定した時に初めて決定されたのではないだろうか?
何となれば、宝石Xを加えることで、物差の目盛自体が変わってしまったりもするのではないだろうか?
いや、下手をすると、美しさ値の目盛が「宝石A > 宝石B」であったのに、そこに宝石Xを持ってくると、「宝石X > 宝石A」「宝石B > 宝石X」みたいな3すくみ状態になってしまって、物差自体が破壊されてしまう場合もあるのではないか?

主観的な性質の評価とはそういうのものである。そもそも、その性質が一本の評価軸に沿って配列可能なのかどうかすら分からない。
「美しい」というのは、「赤い」「軽い」「暖かい」とは根本的に異なるのだ。