日本は単民族国家であり、民族差別とは無縁と考えられていた時代があった。
アイヌ民族に対する差別は、もっぱら北海道限定の話であり、多くの日本人は民族差別とは無縁。
そういう意識で、多民族国家や移民の多い国の状況を、上から目線で眺めていたのではないだろうか?
しかし、自らの内にある「差別の種」に無自覚な者は、状況が変わればあっさりと差別主義者の本性を現してしまうものだ。
現在、この国に蔓延しつつあるのは、中国人や韓国人に対する民族差別である。
中国人観光客が飲食店に訪れると、食べ後が汚い。
そういう話をよく聞くし、事実、そういう事があるのだろう。
しかし、だから飲食店が「中国人お断り」にするのも止む無しなのか?
「中国人」と一口に言っても色んな人がいる。
旅の恥はかき捨ての団体旅行者だけではない。
留学生に研修生、出稼ぎ労働者。
現在の「卓球日本」のベースは、帰化した中国人元プロ選手の功績が大きい。
「中国人」だから「マナーが悪い」として、十把一絡げにできるのか?
逆に、日本人にもマナーの悪い人間は沢山いる。
日本人にも、そういう時代があった。
ハワイツアーの団体が、マナーを知らないとして顰蹙を買っていたのだ。
チップを払わない。
大声でベラベラ喋り、どこにでもズカズカ入っていって、所構わずカメラを向ける。
今、我々が責める彼らの姿は、かつての日本人の姿でもあるのだ。
マナーが悪い人を、そのマナーの悪さ故に責めるのは仕方ないにせよ、それを「中国人」という類別と同一視するのは偏見である。
しかし、多民族国家でない日本では、他民族との付き合い方が成熟していないのだろうか。こういった点に無自覚な方が多い。
「中国人は食べ方が汚い。もう、ウチの店には来て欲しくない。」と言う方は、「それは中国人に対する偏見ではないか?」と指摘すると…。
後は想像通りの罵声が返ってくる。