ふむ。段々とワケが分からなくなってきた。一体、これはどこを目指したらいいのだろう。(笑)

ここまでの考察でハッキリしたのは、世界を征服するまでのプロセスと、世界征服後の統治プロセスは分けて考えた方が良いということだ。
世界征服に辿り着くまでの道のりは、リーダーの才覚一つでどうにでもなるかも知れない。極論を言うと、知力がなくても武力さえあれば、力ずくでどうにかなるだろう。
しかし、征服後の統治プロセスが大変難しい。世界中の政治リーダーが苦労しているのだから当たり前だ。必勝パターンがあるなら、既に誰かがやっている。

支配者が、支配者としての地位を認められ、忠誠を誓ってもらい、立場を盤石なものとするには、逆に支配する人々のワガママな欲求におもねる必要がある。不満を言う人間を際限なく粛正し続ける恐怖政治なぞ長続きしない。
支配者と言えど1人の人間である。民衆という圧倒的な数の力には叶わないのだ。
つまり、世界征服を達成した瞬間、支配者は世界の奴隷になってしまう。

よくよく考えると、世界を一つの帝国に統一するという発想に、そもそも無理があるのかも知れない。
プーチン、習近平、金正恩。
現代の独裁的指導者たちは、内政上の矛盾・問題を、外交ポイントを稼ぐことで挽回し、支配者の地位を維持している。自国民が飢えているなら、他国の利益を分捕ってきたらいいのだ。
しかし、世界を一つに統一してしまったら、もはや利益を分捕ってくる他国は存在しない。全てが自国民なのだ。
かくして、外交上の問題が消滅する見返りに、もはや誤魔化しようのない内政上の問題について頭を悩まし続けることになる。

このように、世界征服に成功したショッカーの総統は、連日内政問題に頭を悩ませ続けることになる。そして、かつての仇敵仮面ライダーが、なぜいつも眉間に皺を寄せていたのかを思い知ることになるだろう。全ての人に喜んでいただくように尽くすというのは、眉間に皺が寄るようなストレスなのだ。
いや、まだ仮面ライダーは幸せだったと言える。彼には戦うべき敵がいた。少々失敗しても、みんなの敵と戦ってさえいれば許され、愛され、尊敬されたのだ。
しかし、世界を征服したショッカーの総統には、内政上の問題をすり替えられる敵がいない。世界を我がものにするということは、世界の問題も全て引き受けるということである。問題から逃げて、利益だけを頂戴する寄生者では世界の支配者とは言い難い。

思えば、世界史に登場する英雄たちの物語も、世界征服を目指すプロセスばかりが語られ、征服後の統治の話はさほど耳にしない。
「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」と謳われた徳川家康も、結局はテンプラを食って死んでしまったのだ。
世界征服とは決して完成しない夢であり、そこに辿り着くまでのプロセスが幸せなのかも知れない。
そして、自己実現を果たした後に待つのは、延々と続く世界統治という地獄の後始末なのかも知れない。

夢の野望は諦めて、日々を堅実に生きた方が良い。世界征服とはおそらく論理的に矛盾した命題なのだろう。
本当に「世界の全て」を支配するということは、世界そのものと一体化するということであり、その瞬間に「私」は消滅する。
 
「究極の支配者は、究極の奴隷である」
支配者の道は家畜化の道と言い換えても良い。
何事もほどほどにしておこう。
今回は失敗。