「次の星はどんなとこなん?」

転移用テントの中で尋ねてみた。


「次の惑星γは、この散開星団の中でも最も古い恒星系に属する。誕生から75億年ほど経っているので、恒星の活動は少し弱まっているだろう。」

ピスが星図のようなものをしげしげと眺めながら言った。


いま我々は、地球から1500光年離れた古い散開星団にいる。(・_・;

生物のいる惑星がたくさん見つかったらしいので、その実態を順に調べているのだ。

超科学文明の星である惑星Tehar在住のピスとアイちゃんに連行、もとい誘われて、ここまでノコノコ付いて来た。σ(^_^;)

ちなみに、ピスは柴犬っぽい姿に化けた地球外知的生命体である。

アイちゃんは黒猫っぽい姿のアバターであり、その正体はTeharの文明を支えるスーパーAIだ。


「恒星の活動が弱ってたら、あんまし大した生物いてへんのとちゃうの?

(・_・; 」

「いや、年数が経っている分、逆に高度に進化した知的生命がいるかも知れない。

それなら逆に、恒星活動が弱くても技術でカバーしているだろう。」


なるほど。(・_・;


「さあ、着いたぞ。」

ピスが転移用テントの出入り口カーテンを開けた。

ピスに続いて外に出る。

「なんやコレ?(・_・; 」


夕暮れ時のような薄暗い大地に、大小様々なオブジェのようなものが林立している。

人間の背丈くらいの細長いものや、ラグビーボールサイズのモノもある。

形は総じて不規則で、表面は滑らかにデコボコしている。

岩石っぽく見えるが何となく質感が違うし、自然物にしては妙に作為的に見える。


「コレはγ星人の芸術作品と違うんか?(・_・; 」


ピスはオブジェをコツンコツンと叩いた。

「見たところ、削ったり加工したような形跡はないな。随分と年数が経っているようなので、古いお地蔵様のように表面が風化しているだけかも知れないが。」


Tehar人のピスの口から「お地蔵様」という言葉が出てくるのが何となく可笑しい。σ(^_^;)

ヤツは地球の調査のために1年ほど滞在していたので、地球人の文化への造詣が深いのだ。(笑)


オブジェの一つをじっと見つめていたアイちゃんが口を開いた。

「素材の主成分は炭素骨格の高分子化合物ですね。どうやら生物由来の物質のようです。」

アイちゃんはスーパーAIのアバターなので、様々な解析機能が備わっているのだ。

ワタシのオナラの成分も分析された。(笑)


「ほんなら、木材みたいなモンなんか?(・_・; 」

「いえ。細胞の痕跡のようなものは見られませんので、生物の遺骸ではないと思います。おそらく、分泌物か何かが固まったものでしょう。」


先に調査した2つの惑星のイヤな思い出が頭をよぎった。(-。-;


「ひょっとしたら、地面の下にでっかい化け物が潜んでて、そいつの背中から出てるんとちゃうやろな。(・_・; 」

「大丈夫です。地面の下からの生物反応はありません。」

「お前の発想は異星探検向きだな。危機回避のためにはそういう突拍子もない想定をできる事が大切なのだ。」


褒められているのか、からかわれているのか今一つ分からない。(笑)


しばらく黙ってオブジェを眺めながらその辺をウロウロしてみた。

肝心の生き物らしきモノが見当たらないと思っていたのだが…。


「そこに何かいますね。」

アイちゃんが言った。

高さ2mくらいのオブジェの前で、上を見上げている。

駆け寄って見てみると、大きさ2cmくらいの黒い蜘蛛みたいなものが、目の高さくらいの所にへばり付いていた。


「我々には手が届かないので、お前が捕まえてくれ。」

柴犬と黒猫がこちらを見上げている。


「えぇ…。なんか気色悪いやん。(-。-; 」

「大丈夫だ。これを使え。」

ピスは透明のプラスチックカップのようなモノを取り出した。


「これを被せて捕まえるのだ。」


オブジェにくっ付いている黒い蜘蛛モドキの上に透明カップをパッと被せると、蜘蛛モドキは吸い込まれるようにカップの底にへばりついた。

カップをオブジェから離すと、蓋がシュッと出て口が閉じた。


3人、もとい3匹が顔を寄せ合って、カップの中の蜘蛛モドキを改めてよく観察した。

ダンゴムシのような楕円形の身体に、蜘蛛のように細長い脚が4本付いている。

脚の先から、微かに光る半透明の細い糸のようなモノが出ているようだ。

やがて蜘蛛モドキは、4本の脚先から糸を出しながらカップの中を忙しなくカサカサ動き始めた。カップの内壁がどんどん糸に覆われていく。そしてとうとう中が見えなくなったが、それでもまだ蜘蛛モドキはカサカサ動いている。(・_・;


「この蜘蛛モドキの糸の成分は、あのオブジェの成分と同じですね。」

「なら、あのオブジェは蜘蛛モドキの糸が集まってできたんか?(・_・; 」


改めて周囲に林立するオブジェを眺めてみた。

これらが全て、蜘蛛モドキが分泌する糸でできたというのだろうか。途方もない話である。(・_・;


「もう少しその辺を見て回ろう。」

ピスに促されて、オブジェの間を歩き始めた。


最初は小さくて気付かなかったが、改めて観察してみると、オブジェのそこここに蜘蛛モドキがくっ付いている。

よく見ると、いずれも脚先から伸びる細い糸が微かに光っている。


「こんな大きなオブジェになるまで、何年かかったんやろ。(-。-; 」

「この蜘蛛モドキは、歩く時にずっと糸を出し続けているので、それほど時間はかかってないのではないか?」

「微量でも蓄積は早いかも知れませんね。」


こんな会話をしながら歩き回っていたのだが、ふと足のズボンに蜘蛛モドキが一匹付いているのに気付いた。

「わっ!」


慌てて片足を上げて、蜘蛛モドキを払い落とした。

蜘蛛モドキは地面に落ちて逃げて行ったが、ズボンの上に早くも蜘蛛モドキの糸がたくさんへばり付いていた。

(ー ー;)


「それにしても、こんだけずっと糸出し続けようとしたら、かなりたくさんの餌がいるんとちゃうんか?(・_・; 

なに喰って生きてるんやろ。」

「餌ならここにいるではないか。」


えっ?(・_・;


ピスがこちらを見つめている。

そしてズボンの蜘蛛モドキの糸が付いた部分に視線を移した。


アイちゃんがオブジェを眺めながら言う。

「どうやらオブジェの内部は空洞になっているようですが、何かの残骸が下に積もっていますね。」


……。(・_・;


「ほら、また次の蜘蛛モドキが寄って来てるぞ。」

ピスが足元を指差した。


「古い惑星なので高度文明を期待したのですが、惑星γの生命は、もう終焉を迎えつつあるのかも知れませんね。」


この林立するオブジェは、蜘蛛モドキたちによって最期のトドメを指された、この星の生き物たちの想い出を語る作品だったのかも知んない。

かくして、惑星γの知的生命探しを早々に諦めて退散するコトになったのだ。


知らんけど。(-。-;