O では『深夜特急』ということで、参りましょう。

 

T なんだかMCみたいでわざとらしいな(笑)。

 

O 最初はぎこちないかもしれないけど、あまり気にしないでください。この『深夜特急』を、ぜひ僕に勧めてくださったTさんと語ってみたかったですね。

 

T あれ?普通に名前出しちゃうんだ。

 

O それも大丈夫。文章になるときはアルファベットに置き換わってるんで(笑)。

 

T 僕が読んだのは1年ぐらい前なんだけど、それから何人もの人に勧めて読んでもらったね。何人もの人に読んでもらったってことは、それだけ万人受けする作品なんだと思う。

 

O T君も言ってたけど、ページをめくるのがもったいなくなるというか、本当にそんな感覚がして、一気に読んじゃったね。でも、どちらかというと前半のほうがワクワク感をもって読めたかな。

 

T けっこうみんなそう言うね。amazonの書評なんかを見ても最初の『香港・マカオ編』が一番おもしろいって書き込みが多かった気がする。

 

O 主人公である沢木さんの心境としても、旅が始まったころのほうがこれから出会うものへの期待もあってワクワクしていたんじゃないかな。後半に入ると悟ってきちゃってる感じがあるよね。

 

T とくにヨーロッパに入ってからは旅の終わり方のほうに意識が集中しちゃってるね。あと、文庫だと6冊に分冊されてるこの作品は、もともとは第1便から第3便までの全3冊で出ていたんだけど、第3便が出たのは実際の旅を終えて10年以上経ってからなんだね。それだけ整理に時間がかかっているから、その分見方も客観的になってきて、情熱という意味では薄れてしまっているのかもしれない。

 

O ではどちらかというと、旅していく中で感動が薄れたというよりも、書くまでに時間があったから薄れてしまったと考えられるのかな。

 

T あとは沢木耕太郎自身の問題だけでなく、ヨーロッパのお国柄もあるだろうけどね。

 

O たしかに、アジアの国々では何もしなくても何かが起きたというようなことも書かれていたね。

 

T 最初のほうの香港やマカオは情熱的な街だったしね。

 

O この作品は構成もおもしろいよね。旅の始まりの香港からじゃなくて、デリーのドミトリー(共同宿泊施設)に滞在しているシーンからスタートする。しばらく行った途中地点を作品の冒頭に持ってきて、そのあと旅のスタート地点に戻ってまた書き始めると、この構成がうまいと思う。

 

T もともとのコンセプトはバスでデリーからロンドンまで行くってことだから、デリーは第2のスタート地点になるわけで、それでデリーから書き始めたのかもしれないけどね。本来ならば香港やマカオは前座にすぎないはずなんだけど、そこにのめり込みすぎて金も使っちゃう。

 

O マカオのカジノで半か長かみたいなゲームにはまっちゃうんだよね。

 

T 必勝法を考えたりしてね。ああいうのは男なら誰しもはまるところだとは思うけど。

 

O あれですごいと思うのは、負けるなら負けるで落ちるところまで落ちて、ここで旅が終わってしまったとしてもそれでいいと考えている点だね。僕はチキンハートで、そこまで腹をくくろうとは思わない性質だから、自分にはない考えを沢木さんは持っているんだと思ったね。

 

T そのへんが彼の酔狂なところじゃないかな。

 

O 出ましたね、キーワード「酔狂」(笑)!

 

T そもそも普通の人はデリーからロンドンまでバスで行こうなんてことは考えないわけで、人がやったことない酔狂なことをやってやろうという考えを持っているから、それだけ勢いというか、クレイジーな部分もあるんだよ。

 

O いろんなところで言われてたよね、「鉄道で行け」って(笑)。でも普通は道で外国人に「バスでどこどこまで行けますか?」と聞かれて、鉄道のほうが便利だったら鉄道を勧めるよね。それを「それでもバスで行きたい」と。

 

T そもそも沢木耕太郎って、就職した会社を1日で辞めた男だからね。出社初日に雨が降って、それまでは傘をささないで生活していたのに、濡れないように傘をささなきゃならなくなる生活が嫌だったと。

 

O たしかにそんなこと書いてあったね。会社辞める理由も様々なんだ。

 

T いや、でも普通そんなことで辞めないでしょ(笑)。

 

O 『踊る大捜査線』の青島は「君は寄生虫か?」と言われて辞めていたけど。ところで、Tさんは会社を辞めようかと考えたことはありますか?

 

T あれ?そっちのほうに話持ってっちゃうの?脱線のさせ方がよくわからんなぁ(笑)。

 

To Be Continued...

高校の同級生だった「O」と「T」。


好きなことを真剣に語り合いたいなぁ。


そんな単純な動機から彼らは真面目にも対談集の作成に取り組んだ。


参考になることなど何もない。


普通の人が普通のことを語っただけの対談集。


それではスタートします。