T 最近だと『外交官 黒田康作』も見たけど、黒田康作のキャラは青島とは正反対で、冷徹だけど頭は切れて仲間とつるまず一人で事件を解決していくタイプなんだよね。でもそのほうが今の織田裕二には合ってるかもしれないと思った。

 

O 織田裕二のイメージも青島から黒田にシフトしていこうと、そういう意図もあるのかもしれないね。それか例えば、青島がまかり間違ってものすごく出世しちゃって、室井さんのような立場になって、逆に湾岸署には青島のような血の気の多い若手が入ってきて、それを抑えるというような設定も面白いかもしれない(笑)。

 

T どうでもいいけど、筧利夫や真矢みきは最初は敵対する役として出てきていたけど、いつの間にか室井さんの味方みたいな存在になっちゃったね。

 

O 筧利夫も真矢みきも最初に出てきたときはかなり冷酷な感じだったのに。

 

T 要は善玉と悪玉という存在があって、室井さんが善玉寄りになってしまったんで、それに対する悪玉として登場してきたんだね。

 

O だけど室井さんは最初から悪玉だったとは思わないな。

 

T でも最初はそんな雰囲気で描かれてるじゃん。それがだんだん青島たちの影響を受けて変化していく。

 

O たしかに最初に見たころは自分も小さかったから偉そうな奴だと思って見てたけど、後の室井さんも知ってから見ると、それも室井さんの真面目さからくるものであって、事件解決が第一ということを本当に思っていて、その信念に忠実に従って行動しているからこそ、厳しい言動が出ちゃうんだと思うな。

 

T その室井さんのある意味での究極の答えが出たのがMOVIE2だね。MOVIE1は「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」というセリフに見られるように組織を否定するような内容になっていたけど、2は「リーダーが良ければ組織も悪くない」というセリフもあって組織を肯定する内容になっている。2においては現場と本店が力を合わせるという理想が初めて叶ったから、組織を肯定的に捉えることができたんだね。

 

O テレビシリーズの頃では到底実現できなかったことだね。テレビシリーズ最終回でも室井さんと青島が2人で飛び出すところはあったけど、結局は査問会議にかけられることになっちゃってた。

 

T 逆に3やファイナルになると室井さんと青島の個人的なつながりに終止するところがあって、組織捜査の成功とはまた別のものになってしまっている。だからベストな組織捜査について扱っているのは2だけかなと。

 

O 1が組織を批判している点はよくわかるな。さっきの会議室のセリフもあったけど、いろんな立場の人が「うちの者を行かせる。所轄にはやらせるな」なんて言い合ってて、室井さんはそこを押し切って青島に逮捕させようとするんだけど、今度は青島が室井さんに遠慮して、室井さんが着くまで逮捕しないでいるとその間に刺されてしまうんだね。早く逮捕して連れ出してしまえば刺されずに済んだのに。

 

T そういうのってテレビシリーズの中でもあったよね。手錠かけずにネクタイとかで手を縛って連れてきて、逮捕は本店にさせるっていう。48時間の回とか。

 

O そうやって差し出すと、本店の人はもっともらしく逮捕するんだよね。あれも皮肉めいてる。MOVIE1まではその流れで来たんだけど、2でやっとそこを破るんだね。

 

T 思えばテレビシリーズの第4話でも室井さんが青島を本店に呼んで一緒に捜査する話はあったけど、そのときは「なんであんなやつ連れてくるんだ」って目で見られて、協力的な雰囲気は全くなかった。

 

O 青島が捜査に同行しようとすると、「お前は一人で勝手にやってろ」みたいなこと言われるんだよね。そのくせ青島が失敗すると「バカヤロー!なんで勝手に行動したんだ!」と怒鳴ったり。

 

T でも本店と所轄でそんなに溝があるとも思えない気がするんだけどな。人事交流で行ったり来たりもしてるだろうし、キャリアとノンキャリの差はあるかもしれないけど、本店にだってノンキャリの人はたくさんいるだろうしね。

 

O やっぱりノンキャリの人たちも本店にいるうちに本店の空気に染まっていっちゃうんじゃないのかな。それか若くして室井さんに一本釣りされた青島を妬ましく思ってるとか。

 

T キャリアとノンキャリの話だと、最終回の査問会議での差別人事も象徴的だね。室井さんは訓告だけで済むけど、青島は交番勤務に戻されるっていう。

 

O 室井さんは「平等に裁いてください」と主張するんだけど、「平等に裁いたつもりだ」と言われちゃうんだね。で、結果に不満はないと言う青島にも室井さんは「かっこつけるな」と食い下がって、挙句の果てには青島と喧嘩を始めて、青島に「一緒に捜査してて足手まといだった」なんて言われちゃう(笑)。

 

T あのときの室井さんと青島の捜査も面白かったな。室井さんに切れた電話に向かってしゃべらせたり(笑)。

 

O でもこの前再放送で見たら室井さんと青島の捜査のくだりがばっさりカットされてたよ。拡大版になってたのを再放送の1時間の枠に収めなきゃならないから仕方ないとは思うけど、ものすごくがっかりした。「この店を買い取る。警視庁で買い取る。いくらだ?」も無かった(笑)。

 

T まあ、再放送は放送する地方局によって調整が加えられてるみたいだからね。局ごとの編集の仕方によって無数のバリエーションが存在しているということも聞いたことがあるし。

 

O そうなんだ。それにしても室井さんと青島の捜査シーンがカットされちゃうのはショックだったな。録画して保存版にしようと思っていたのだが(笑)。

 

T ちなみに、MOVIE1で誘拐される吉田副総監と和久さんの関係もちょうど室井さんと青島の関係と同じなんだね。吉田副総監が上に行って理想を実現させるという約束を和久さんとしているんだけど、吉田副総監が「ついに理想は実現できなかった。次の世代に託そう」と話すシーンがある。これってどうなのかね?副総監といえば警察のナンバー2だよ。ナンバー2をしてまでも理想って実現できないものなのかね?僕には言い訳にしか聞こえないんだが(笑)。

 

O 言われてみればその通りだ。副総監にまで登りつめたのにやりたいことが全くできないってのは、もうやる気がないとしか思えないよね(笑)。どこまでいけばやりたいことができるのかって話になってくるね。

 

T それだけ理想を実現することは難しいということなのかもしれないけど。

 

The End.