高村光太郎の「道程」を拝借させていただくとして。麻生首相の有り様を表すなら「僕の前に道はない 僕の後ろにも道はない」なのである。つまり虚無なのだ。

[朝日]「混乱生じたような印象、はなはだ遺憾」12日の首相



【鳩山総務相辞任】



―――― 鳩山総務大臣辞任についてうかがいます。日本郵政の社長人事を巡って鳩山総務大臣が辞表を提出しました。受け止めをお願いします。



麻生総理 「郵政事業っていうのは、国民の財産だと思っています。そのー、郵政事業に関して、政府と郵政会社との間に混乱を生じたような印象を与えたということは、はなはだ遺憾なことなんであって、この状況は、早急に解決されてしかるべき。基本的に、そう思って判断をさせてもらいました」



―――― 西川社長は続投ということでよろしいんでしょうか。



麻生総理 「西川さんの件については、いま、仮にも郵政会社というのは、民間会社。株主が特殊とは言え、その株主が人事権を使うっていうのは、基本的には、民間の事業に対して、国が直接色々なことを介入したりするっていうのは、努めて避けるべきだと、私は、基本的に、そう思っています。したがって、いま、色々な業務についての質問、業務改善に関する話が、総務省の方から、会社の方に出てるはずですが、そのー、業務の改善等々、いろいろありますけど、そういった問題を、法律と事実に基づいて、新しい大臣の下に、その問題を、どう解決していっていかれるかと。その判断を、きちんと出た上で、判断をさせて頂きます」



―――― 鳩山大臣は、辞任後のぶら下がりで、「世の中、正しいことが通らないことがある」という心境を記者団に語りましたが、鳩山大臣は、西川さん続投反対を訴えたんですが、総理は、正しい判断だと思っていますか。



麻生総理 「私は、西川さんという民間の会社の社長人事に、色々、話をされる場合には、取締役会やら、その前の指名委員会などなど、いろいろありますけれども、その前の段階で、きちんと対応をされておかないと、話は、なかなか難しいことになると、基本的に、そう思っております」



―――― 今回で、麻生内閣の大臣辞任は3人目になります。麻生内閣のリーダーシップの低下を不安視する声も上がっていますが、政権へのダメージ、差し迫った解散総選挙の時期については、影響があると考えますか。



麻生総理 「解散総選挙については、前々からお答えしている通りです。ダメージにつきましては、こりゃ、私に聞かれるより、聞かれる相手が間違っていると思いますけど」



―――― さきほど、戸井田徹・厚労政務官が官邸に辞表を提出に来ました。鳩山氏と行動を共にすると言うことですが、こうした新しいグループ、動きについては、どうお考えでしょうか。



麻生総理 「戸井田さんのことは、ちょっと、細目聞いてませんので、答えようがありません」



―――― 総理に対してとった行動だと思いますが、そういうことについては、どうお考えでしょうか。



麻生総理 「細目、その本人とは、話を直接やっていないので、答えようがありません」



―――― 佐藤国家公安委員長が総務大臣を兼任することになりました。与謝野大臣も3大臣を兼任されていますが、内閣改造について、改めて、どうお考えでしょうか。



麻生総理 「いま、内閣改造を直ちに行うという考えを持っているわけではありません」



―――― 日本郵政の問題は、株主総会の時期までに決着をさせるというようなことを総理はおっしゃっていましたが、今日という日を、決着の日に選んだ理由はあるんでしょうか。



麻生総理 「いや、あまり、長び、長びいて話が混乱をさらにしてるかのごとき印象を与えるのは、いかがなものかと思っています」

鳩山前総務大臣と麻生総理を政治家として比較した場合、政治信条のあるなし、初志貫徹のあるなし、責任感のあるなし、国を憂う気持ちのあるなしなど全てにおいて鳩山前総務大臣のほうが上だ。


今回の西川社長続投問題で鳩山前総務大臣が発言していることは明らかに間違っていると考えているがこの姿勢には共感できるのではなかろうか。


過去記事の参照
西川社長の続投を支持 日本郵政の指名委員会が鳩山総務相に「NO」 非常識なのは族議員と官僚では

日本郵政の西川社長の会見詳報と2009年3月期連結決算で純利益が4227億円


政治家としてその発言に最後まで責任を持ち、大臣というポストなど関係なく潔く去るという姿勢は今最も国民に求められている必要不可欠なものだ。


これでこそ「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る」というものだ。そしてその道を後ろから歩いてくる同志もいる。戸井田徹厚生労働政務官と古川禎久環境政務官の辞任などは最たるものだ。


一方、麻生総理はいかがなものなのだろうか。


鳩山前総務相は、麻生首相をサポートする「太郎会」の会長でもある。そして自民党総裁選で3回にわたって麻生首相を支援してきたのだ。


いわば同志であり盟友だ。今の総理大臣という地位があるのも鳩山前総務相のおかげだと言っても過言ではないだろう。その腹心をこうもあっさり40分程度の話し合いで切るというのはまさに主君ご乱心の如き振る舞いだ。


今回の件はかの有名な「泣いて馬謖を斬る」ということとは大違いである。


規律・秩序を保つためには私情を挟まず違反者を処分したのではなく、初志がなかったため決断ができず時間だけが経過した結果、選択肢が無くなりそうせざるを得なかっただけだ。


つまり麻生首相には何の考えも無かったのだ。これは就任から現在に至るまで全てにおいて第三者的立場からでしか発言ができていないことからも伺えよう。


まさに「僕の前に道はない 僕の後ろにも道はない」で何の存在も示さず、ただただ世の中を傍観し瞑想に耽ってたまに独り言で呟いているだけなのだ。


普通に考えればここまで事態を大きくすることなくもっと初期段階で麻生首相の郵政事業に関する考えをキチンと閣僚に示すべきだったのだ。


ただ当時の郵政民営化での迷走発言ぶりからして確固たるビジョンを持っていないことがはっきりしていた。今振り返ってもそこから長らく政権を維持していること自体がはなはだ遺憾なのである。


これにより辞任した鳩山前総務相は西南戦争に決起した西郷隆盛の言葉「政府に尋問の筋、これあり」を引用し「そういう心境ですね」と締めくくった。


果たして離党まで踏み込めるかどうかに注目だ。


そして西川社長続投問題については一応の決着が付いたことになるのだが、懸念されるのは解散・総選挙の時期が延びてしまう可能性が高まることと西川社長続投に待ったがかかる可能性が高まることだ。


解散・総選挙に関して言えば野党が挙ってこの件を含めた麻生首相の振る舞いつまりは指導力の無さを徹底的に追求することに期待したい。また次回党首討論での鳩山民主党代表にとっては格好の材料となろう。


また西川社長続投に関しては財界が一致団結し、再度西川社長続投が認められない場合は日本郵政の社外取締役を務める奥田前日本経団連会長らが抗議の意味で一斉辞任という強硬論を唱えるべきだ。


アイデンティティー・クライシスである麻生政権をこのまま放置してはいけない。


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