豈無乘秋隼 羈絆委高墉

qǐ wú chéng qiū sǔn, jībàn wěi gāoyōng

秋に乘じて隼がないわけではありませんが、羈絆(きはん、つなぎとめること)させられて、高い塀に捨てられて、


但食烏殘肉 無施搏擊功

dàn shí wū cánròu, wú shī bójí gōng

ただ、烏の殘肉を食べているだけで、搏擊(はくげき、奮闘して攻撃して争う)の功を立てることはありません。


亦有能言鸚 翅碧觜距紅

yì yǒu néngyán yīng, chì bì zījù hóng

また、能言(のうげん、弁舌に長じている)鸚鵡(おうむ)がいて、翅(つばさ)は碧(あお)く、觜距(しきょ、くちばしとけづめ)は紅(あか)いのですが、


暫曾說烏罪 囚閉在深籠

zàn céng shuō wū zuì, qiúbì zài shēnlóng

しばらく、烏の罪を說(と)いたことがありましたが、深い籠に囚閉(しゅうへい、閉じ込められること)されてしまいました。


青青窗前柳 鬱鬱井上桐

qīngqīng chuāngqián liǔ, yùyù jǐngshàng tóng

青青とした窗前(そうぜん、窓の前)の柳、鬱鬱(うつうつ、草木がおい茂るさま)とした井戸の上の桐。


貪烏占棲息 慈烏獨不容

tānwū zhàn qīxī, cíwū dú bù róng

貪欲な烏は占拠して棲息し、慈烏(じう、親を慈しむ烏)は獨(ひと)り容れられません。


慈烏爾奚為 來往何憧憧

cíwū ěr xī wéi, lái wǎng hé chōngchōng

慈烏よ、爾(なんじ、おまえ)はどうして往(い)ったり來たりして、憧憧(しょうしょう、往来のたえないさま)としているのでしょうか。


曉去先晨鼓 暮歸後昏鐘

xiǎo qù xiān chéngǔ, mù guī hòu hūnzhōng

暁には晨鼓(しんこ、夜明けを告げる太鼓の音)に先んじて行き、暮れには昏鐘(こんしょう、日暮につく鐘の音)より後に歸(かえ)ります。


辛苦塵土間 飛啄禾黍叢

xīnkǔ chéntǔ jiān, fēi zhuó héshǔ cóng

塵土(じんど、俗世間)の間を辛苦(しんく)して、飛んで禾黍(かしょ、稲ときび)の叢(くさむら)を啄(ついば)みます。


得食將哺母 飢腸不自充

dé shí jiāng bǔ mǔ, jīcháng bù zì chōng

食を得ると母に口中に含んで食べさせて、飢腸(きちょう、空腹なこと)して、自らは充たされません。


主人憎慈烏 命子削彈弓

zhǔ rén zēng cíwū, mìng zǐ xuē dàn gōng

主人は慈烏を憎み、子に命じて彈弓(だんきゅう、はじきゆみ)を削らせます。


弦續會稽竹 丸鑄荊山銅

xián xù Guìjī zhú, wán zhù Jīngshān tóng

弦には會稽(かいけい、地名)の竹がつなげられ、弾丸は荊山(けいざん、山の名)の銅で鑄(い、鋳)られました。


慈烏求母食 飛下爾庭中

cíwū qiú mǔ shí, fēi xià ěr tíngzhōng

慈烏は母の食を求めて、爾(なんじ、おまえ)の庭の中に飛び下ります。


數粒未入口 一丸已中胸

shùlì wèi rù kǒu, yī wán yǐ zhòng xiōng

數粒(すうつぶ)もいまだに口に入らないのに、一丸が胸に命中しました。


仰天號一聲 似欲訴蒼穹

yǎngtiān hào yīshēng, sì yù sù cāngqióng

天を仰いで、一聲(いっせい、一声)號(さけ)び、蒼穹(そうきゅう、青空、大空)に訴えたいようです。


反哺日未足 非是惜微躬

fǎnbǔ rì wèi zú, fēi shì xī wēigōng

反哺(はんぽ、親に養育の恩を返すこと)の日がまだ足りませんが、卑しい身(謙遜語)を惜しむものではありません。


誰能持此冤 一為問化工

shuí néng chí cǐ yuān, yī wèi wèn huàgōng

誰がこのぬれぎぬを持って、一つ彼のために自然の造化者に問うことはできないのでしょうか。


胡然大觜烏 竟得天年終

hú rán dà zī wū, jìng dé tiān nián zhōng

どうして大きな觜(くちばし)の烏が、畢竟(ひっきょう、結局は)、天寿を全うできるのでしょうか。


画像は白居易