其一 和思歸樂詩

qíyī   hé sīguīlè shī

思歸樂に和する詩


山中不栖鳥 夜半聲嚶嚶

shānzhōng bùqīniǎo, yèbàn shēng yīngyīng

山中に栖(す)まない鳥が、夜中に嚶嚶と鳴いています。


似道思歸樂 行人掩泣聽

sì dào sīguīlè, xíngrén yǎnqì tīng

思歸樂(しきらく)と道(い)うのに似ていて、行く人は涙を掩(おお)いながら聽いています。


皆疑此山路 遷客多南征

jiē yí cǐ shānlù, qiānkè duō nán zhēng

皆、この山路(やまみち)には、流人や左遷されられた者が多く南に征(い)き、


憂憤氣不散 結化爲精靈

yōufèn qì búsàn, jiéhuà wéi jīnglíng

その憂いと憤りの氣が散らないで、結合して精靈となったのではないかと疑っています。


我謂此山鳥 本不因人生

wǒ wèi cǐ shānniǎo, běn bù yīn rén shēng

私は、この山鳥は、もともと、人が原因で生まれたものではなく、


人心自懷土 想作思歸鳴

rénxīn zì huáitǔ, xiǎngzuò sīguī míng

人の心が自ら故郷の土地を懷(おも)うことにより、思歸と鳴いていると作(な)したかったのだと謂(おも)います。


孟嘗平居時 娛耳琴泠泠

Mèngcháng pínjū shí, yú ěr qín línglíng

孟嘗君は常日頃、琴の清らかな音色で耳を娯(たの)しませていましたが、


雍門一言感 未奏淚沾纓

yōngmén yìyán gǎn, wèi zòu lèi zhān yīng

(琴の名人の)雍門周の一言に感じて、未だ演奏をしていないのに涙で冠の紐を濡らしました。


魏武銅雀妓 日與歡樂幷

Wèiwǔ tóngquè jì, rì yǔ huān lè bìng

魏の武帝(曹操)の銅雀台(鄴(ぎょう)の宮殿)の妓女たちが、日々、歓楽とともに幷(なら)んでいましたが、


一旦西陵望 欲歌先涕零

yídàn xīlíng wàng, yù gē xiān tìlíng

一旦西陵(武帝の陵墓)を望めば、歌おうとして、先に、涕(涙)を零(こぼ)しました。


峽猿亦無意 隴水復何情

xiáyuán yì wú yì, lǒngshuǐ fù hé qíng

長江三峡の猿に悲しいという意もありませんし、隴水に泣くとい情もありません。


爲入愁人耳 皆爲腸斷聲

wèi rù chóurén ěr, jiē wéi chángduàn shēng

愁人(しゅうじん、悲しい心を抱いている人)の耳に入ったために、皆腸斷の聲となったのです。


(三)に続く


画像は白居易