「Yくん!? 」
いつもならここで姿を現す筈のYくんがいない事に気付き、焦ってスマホを取り出した瞬間、立体駐車場の通路を私の調査車両がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
「なるほど!そういう事か!! 」
男性の後ろに2台ほど買い物客の車が続いていたが、何とか今ならベストタイミングで男性の車を尾行出来そうだと思った。
「ナイス!このう〇こ野郎ぉぉぉ!! 」
Yくんも同様に、視線で私を探しているようだ。河野京子とすれ違った時、微かにYくんの視線が動いた。私は分かりやすく手を振って、Yくんの車の前に飛び出した。
「よくやった。車を取りに行ってたの? 」
「そりゃそうっすよ!僕を誰だと思ってるっすか? 」
「って言うか、お前か犯人は!! 」
「何の事っすか? 」
「眼鏡だよメ・ガ・ネ!!! 」
「小さな事は気にしちゃダメっす! 」
「チッ‼ 」
彼のファインプレーにここでは何も言えない。今日の調査が終わり、帰る道すがらに彼の自宅からギリ歩いて帰れないくらい、ビミョーに遠い所で騙して置き去りにしてやろうと心に決めて、大人しく助手席に乗っている事にした。
男性の乗った車はそのまま久留米市中心部へ向かうと国道へ入り、福岡市内方面へと走っていく。こちらは河野京子と打って変わって、高級外車らしく比較的ゆっくりしたスピードで優雅に走っていく。
「おい、Yくん」
「なんすか? 」
「あの男、ライバル企業Bの社長か何かかなぁ… 」
「どうっすかねぇ… 」
「普通に考えてやっぱりそうだろう。図面見ながらテナント見ていたし」
「そうっすねぇ… 」
「そこがハッキリすれば、彼女の不正を暴く事になる。この調査の大半は終わりになるよ」
「そうっすか? 」
「そうっすかって、そりゃそうだろう? 」
「旦那はそう思っていないんじゃないっすか? 」
「…… 」
「旦那はあくまで若い嫁さんの浮気が気になって仕方ないっす。企業の問題は狩野省吾弁護士にとって大切な内容っすよね? 」
「まぁ…確かに… 」
「大元は確かにそうかも知れないっす。でも、クライアントである河野氏の腹を満たすのは、やっぱり『不貞』の方じゃないっすかねぇ… 」
珍しくまともなコメントをするYくんの言い分を聞き、確かにそれは一理あると思えた。河野氏を一企業の社長で捉えるか1人の男性、夫として捉えるかでどこを切り取るかは全く様相が変わってくるだろう。
あんまりYくんが立派な事を言うから、どこかで車がパカッと真っ二つに割れてYくんの方だけどこかに激突しないかなと思いつつ、あぁ…真っ二つに割れたらハンドル付いてないのは私の方だから、こっちが大変になる…とか、熱で魘されて余計な事を考えてしまう。
「まぁ、いずれにしてもコイツと来週も会うっすよね?あの女は? 」
「…みたいだな」
今後、この調査に於いて重要な男性だ。何とかYくんに頑張ってもらって彼の情報を得られればと考えるうちに、私は目を瞑っていた……
(続く)
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