「うん、旨い… 」
狩野省吾弁護士は、捌かれてすぐの味を一切れ食べると、両目を瞑ったまま、ひと言そう言って唸る。
「食べよう、食いしん坊の梅ちゃんらしくないな… 」
「はい、戴きます… 」
私が食べやすい様、先に箸をつけてくれたであろう事はすぐに分かったので、そう言って私も一切れ口の中に放り込む。絶妙な甘味と、コリッとした食感が、季節の旬である事を否応無しに悟らせてくれる。
「あ、本当だ!美味いですねぇ… 」
「あぁ、酒が進むね」
私が今の業界に入り、暫く経った頃からのお付き合いだったのだが、こういった形でゆっくりと話をするのは初めての事だ。
これからも、良好な関係であって欲しいと願いながらも、ひとつ、先生が砕けてくるとどんな人物なのか?いつも冷静でクール、時には寒気がするほどミステリアスな一面も持った人物だけに、私の好奇心は膨らむばかりだ。
そして最大の謎は、どうして「隻眼」でいらっしゃるのか。勿論、先天性の疾患かも知れないのだが、先生はこの隻眼の方の瞼を開いたり閉じたりしながら、物事の真実を見極めているような気がしてならなかったから、そんな立ち入る事の出来ない部分まで何でも知りたがってしまう。
「先生、煙草…失礼しても宜しいでしょうか? 」
「梅ちゃん、何を言ってるんだい。お互い気兼ねなく喫煙出来るからここを選んだのだろう?遠慮する事は無いさ」
先生は左手の拳で口元を押さえながら笑う。私もつられて笑顔になった。
「さぁ…仕事の話はまた今度だ。今夜は普段、話さない様な事を大いに語ろう」
「はい、ありがとうございます! 」
その夜、私と狩野先生は大いに色んな話をし、盛り上がった。食事を済ませ、この店を出た後は、先生が過去に仕事を通して行きつけになったバーへ行き、朝方まで話をした。
先生と別れて、タクシーへ乗ったのは、既に夜が明けかかった時間だ…
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「あ~…頭痛ぇ… 」
数時間眠った後、私は目を覚ますと開口一番、そんな言葉が口から出てしまう。さすがに天井が回るとか、そこまで酔ってしまった訳では無かったのだが、私史上1番と言っていいくらいに飲み過ぎて、はしゃぎ過ぎてしまった事は覚えている。
時計に目をやると針はちょうど9時を指していた。習慣なのか歳を取ったのか、いつもの時間に目が覚めた事を少し悔やむ。
「無礼な言動はなかったよな…? 」
昨日の時分に問いかけた。恐らくは大丈夫だろうと思ったが、気持ちが完全に緩んでしまい、気が付かないうちに無礼を働いていた可能性だってあるかも知れない。そんな事が気になり始めていた時、携帯に着信が入った。
「ん?先生?? 」
さっきまで一緒だった狩野省吾弁護士からの着信だった。
(続く)
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