【12時00分】
まるで映画かテレビの実録物でも見ているような気持ちだった。応援要請を受けたのか、静かに警官達が続々と集結してくる。こちらからは見えないが、きっとマンションの奥側にも、それなりに配置されているのかも知れない。
「マジか…(汗) 」
「っすねぇ… 」
のんびり高みの見物をしているように見える私達だったが、職質後に薬物が出てきた訳でもないのに、ただ、柏原幸広を確保するだけの為にこんなに大事になるとは思ってもみなかった。もしかしたら、相手女性の方に嫌疑がかけられているのかとも考えたが、普段は一介の主婦なのだから、それも考え難い。
普通であれば、ただ「疑わしい」というだけの事案にここまで大騒ぎする必要は無い。どう考えても不自然だ。
「おっと…こうしちゃいられない」
私は急に思い立ち狩野省吾先生にメールを送る。
『お世話になります。先生にお知らせしたい事がありますので、先生のご都合の良い時間にご連絡をお願いします』
「これでよし…と」
Yくんはじっと興味津々に警察の動きを観察している。メールを送信し終えた私も、改めてその様子を見守る事にした。
準備が整ったのか、最初に彼らを追い掛けてきた警官2人が、無線でやり取りをした後、満を持してマンションの敷地へ歩を進めていく。瞬間、情報提供はしたものの、本当にあの場所に2人がいるのか不安を覚えた。
「おい、Yくん。もしも、あそこに柏原幸広達がいなかったら、俺、疑われんのかなぁ? 」
「いてもいなくても最初から社長疑われてるっすよ! 」
「お前、このタイミングでふざけんなよっっ!! 」
思わず口を突いて出た私の気の小ささに、Yくんが笑いながら答える。
「社長考え過ぎっすよ。何にも悪い事してないっすから堂々としてりゃいいじゃないっすか? 」
「……そりゃそうだけど… 」
こんな仕事を長年やっていても、なかなかお目にかかれない事態に、心臓の鼓動は高鳴るばかりだ。そして、2人の警察官がマンションの敷地に入って5分も経った頃だった…
【12時07分】
「あっ! 」
「おっ!? 」
行方を見つめていた私達の視界に、項垂れた様子で警官2人と歩いてくる柏原幸広と女性の姿が見えた。逮捕こそされてはいなかったが、警察官達が2人を逃げられない様に脇を固めている様子はすぐに分かる。気が付けば、異様さに気付いた近隣住民が数名、その様子を見物している。
そしてその様子を確認した応援の警察官、中には私服の刑事もいるようだったが、数名に取り囲まれ事情を聴かれている。
「終わったな… 」
「終わったっすねぇ… 」
任意だろうが、女性は制服姿の女性警官に促され、腕にぶら下げていたバッグの中身を見られている。柏原幸広は同様、制服警官に身体を直に触れ、ポケットの中身などを探られていた。
「おっ!? 」
ちょうどのタイミングで狩野省吾先生から着信が入る。
「先生、お疲れ様です」
「お疲れ様。どうかしたかい? 」
「あの…先生、実は柏原幸広が… 」
私は堰を切ったように事の顛末を話す。先生はそれをただ、黙って聞いている。
「あ、先生!2人パトカーに乗せられていきます!! 」
私が慌ててそう言うと、Yくんが小声で耳打ちした。
「薬物検査してたっすよ… 」
話す事に夢中でそこを見ていなかった私は、まるで実況中継でもするように先生にも様子を伝えた。すると狩野省吾弁護士は別段慌てるでもなく、静かに呟いた。
「そうだろうね…分かった。梅ちゃん、長い間ご苦労様。お世話になりました… 」
(終わり)
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