【15時20分】
「やっぱりな… 」
「っす! 」
こちらの思惑通り、柏原幸広と彼女は2人笑いながら景品交換所から一番近い出入り口に姿を見せた。今日は2人して大勝した筈だから、閉店まで打ち続ける可能性は低いだろうと考えているタイミングでの退店だった。
「Yくん、悪いが念の為、もう片方の女性を見て来てくれないか? 」
「そっちは社長の仕事っすよ! 」
「…チッ、面倒くせぇなぁ… 」
本日のルールに従い、私は渋々車を降りた。降り際、Yくんに「どっちがどっちに金を渡しているか観察しておくように」と、ひと言注意しながら店内へと駆けていく。
ドアを開くと同時に、様々な音が耳の中に強烈に響く。私はどうにもこの音が苦手だ。一度店内に入ってしまい、この音に身を委ねてしまえば、いつの間にか馴染んできて何も感じなくなるのだが、よくもこんな五月蠅い中に、1日中いれるものだと多くのパチンコファンには、妙に感心してしまう。
端から丁寧に島を見て歩くが、女性の姿はすぐに見つかった。パチンコでは無くスロットの台に座っている。更に驚いたのが、こちらも1人ではなく横に座る少し厳つめの男性とゲラゲラ笑いながら打っていたからだ。
足を止めて暫く観察していたが、2人の距離は妙に近く、憶測だが深い関係にあるようにも見える。この微妙な「距離感」を勝手に推察してしまうのは、私達の職業病なのかも知れない。
「なるほど…そんな事だったんだ… 」
パチンコ店を通して知り合い、割り切った関係。柏原広幸と女性の間柄を、そんな感覚で捉える。おそらく、そう大きくハズれちゃいないだろう。
「もういいか… 」
私は独りそう呟いて、店を後にした。外へ出ると、丁度、柏原幸広と彼女がタクシーに乗り込もうとするタイミングだった。
「アイツ!早く言えよ!! 」
私はダッシュで車の方へと駆け寄った。乱暴に運転席に乗り込むとYくんに愚痴を言う。
「お前…電話なりしろよ!見逃してしまうだろっ! 」
「ちゃんと見てたっすよ。社長来なかったら僕だけでも行ってたっす! 」
助手席で悠然とそう言い放つコイツの言う事は信用出来ない。どこまで私だけに働かせるつもりかと少し頭にきながらも次の動きに備える。
「どうだった? 」
シートベルトをしながらYくんに尋ねた。
「景品は全て柏原が握ってたっす。それを現金に換えてから、一部、彼女に渡していたように見えたっすよ! 」
「そうか…やっぱりな… 」
「完全に財布の紐はヤツが握ってる印象っすね! 」
「分かった。それが分かればいいよ」
そんな会話を交わしているうちに2人を乗せたタクシーが国道へと出る。当然に繁華街の方向だった。
「今日はどこへお出掛けですか… 」
嫌味半分、そんな独り言を呟きながら、タクシーの後ろへと距離を詰めた。
(続く)
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