【23時00分】
うっすらと汗をかいているYくんに「もう死ん…いや、寝ててもいいよ」と声を掛け、私は尾行に集中する事にした。女性の乗った車は、国道から県道へ抜け、電車通りの方へと東へ進んでいる。
もう車も少ないので比較的に楽な時間が続いているのだが、裏を返せば、ある程度の距離を保たなければ途端に尾行がバレてしまう危険性もある。
「ズズ… 」
「……(-_-;) 」
Yくんの労をねぎらい「寝てていいよ」とは確かに言ったが、そんなものは気遣いのうち、方便に過ぎない。まさかバカ野郎が本気で眠りだすとは!?開いた口が塞がらなかった。
今度助手席がタクシーみたいにパカッ!と開いてコイツを振り落とせる様に細工出来ないものかと思案しているうちに、女性の乗った車は、電車通りへ出て右折していく。女性は青信号で右折したが、慌てる事は無い。ここは信号が赤になった後、時差式で右折の進行が許される。
「案外遠いな… 」
実際に少し驚いていた。てっきり近所に住む人間だとばかり思っていたが、意外に遠い。昔、誰かにパチンコが好きな人は遠征するよ、なんて聞いた事はあったが、明らかに生活圏と呼べる場所からは抜け出したと言ってもいいだろう。
色んな事を勝手に推測しながら尾行している最中に、歩行者用信号が点滅し始めたのが見えた。
「おおっと… 」
不自然にならない程度にアクセルを踏み、距離を詰める。昼間と違い、一発赤信号に引っ掛かってしまえば、スピードの出せる深夜帯だ。途端にどこへ行ったか分からなくなる可能性もある。
「ううん… 」
てっきり黄色でもぶっちぎって進むタイプかと思っていたが、意外な事に女性はゆっくり停車してしまったので再びアクセルを緩めて近付く時間を稼ぐ。そんな小さな心理的やり取りが続いている…
「ええと…熊本… 」
後ろへ停車したタイミングを見計い、ナンバーを反芻し頭の中へ叩き込んだ。
ひとたび見失ってしまえば、もしかしたら何の役にも立たなくなるかも知れないが、それでも何も分からないまま見失うよりはずっといい。何気に後ろのリアガラスからその姿を見ているが、シルエットでは、交通違反にも関わらず携帯電話で誰かと会話しているようだった。
「もしかしたら柏原幸広なのかな… 」
そんな疑問も過りはしたが、アパート前での別れ際を見ていたら、到底そうとは想像出来ない。私の見立てでは、勿論キャバクラの彼女が本命でこちらは遊びといった感じだろう。そう考えていた。
「う…ん…もう僕はなーんも食べれないっすよ… 」
「…コイツ…どんな夢見てんだ? 」
長い信号ですっかり退屈している時、コンソールボックスの中に油性マジックをなおしていた事を思い出した!
「ほほ…思い出した♡ 」
マジックを取り出すとキャップを取ってYくんの顔をじっと見つめる私がいた。
「覚悟しやがれバカ野郎♡ 」
(続く)
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