「梅ちゃん、久しぶり」
そう言って静かに微笑む男性は、まさに狩野省吾先生。私は思わず歓喜する。これでやっと説教が終わるからだ!
「どうなさったんですか先生!どうぞどうぞ!! 」
そう言って立ち上がろうとしたが、ずっと正座させられていたせいか、下半身に根が張った様に自由が利かず、私はよろけそうになった!
「あぁ、狩野先生ですね!ようこそお越しくださいました!いつもお話は伺っております!ささ、どうぞこちらへ!! 」
「イテっ☆ 」
事もあろうにSさんが、狭い事務所で邪魔になった私を足で払いのける。思わず正座の姿勢のまま、パーテーションの向こうに転がってフレームアウトしていく私。
「ふふっ… 」
その光景が余程刺さったのか、狩野先生は拳で口を塞ぎ声を殺すように笑う。
「さすがは梅ちゃんの会社だなぁ… 」
「そうですか…? 」
何がさすがなのか意味不明なまま、私はゆっくりと身体を起こし、先生を相談室の椅子へと案内する。一時的に狭い事務所の中は私達4人と、狩野先生で少し圧迫感を感じてしまう程、狭くなった気がしていた。
「お話はいつも聞いてるっす。Yっす」
「こりゃどうも。弁護士の狩野です」
はじめにYくんがそう言いながら先生と名刺交換をする。その後ろにはSさんが名刺入れを持って順番を待っている。バイト扱いのひーは名刺を持たないので、奥へと入りお茶の準備をしている。
「はじめまして!いつもお世話になっています。Sです」
「はじめまして。狩野です…これ、良かったら皆さんで召し上がって下さい」
先生がそう言って差し出した手提げを見た瞬間、Sさんが歓喜した。
「わぁ!すみません先生!!キャー(≧∇≦)!!これ、うちのバカが食べたチョコレート(⋈◍>◡<◍)。✧♡ 」
どこかで見覚えのある手提げだとは思っていたが、まさか私が今まで正座させられていた原因と同じチョコだとは思ってもみなかった。しかしSさんの喜びようは相当なもので…
「さすが先生!神♡ どこかのバカデブとは全く違うんですね!すごーい!! 」
どこかの通販番組で聞いたような「すごーい」と鼻にかかったようなお馴染みのセリフと、私の名前こそ一切出てはいないが、思いきりディスられているのだけはハッキリと分かった(´;ω;`)ウゥゥ
先生の選ぶ手土産のセレクトを見ても嫉妬しそうになるが、とりあえず私が叱られる原因を拭い去ってくれた事には感謝した。もしも先生がここへ来ていなければと思うとゾッとしてしまう。
「いや、先生。お待たせしました。今日はどうなさったんですか?先生自らがいらっしゃるなんて初めての事ですよね… 」
格好を付けてそう言いながら対面の椅子に座るが、初めて弊社にいらした先生に見せた姿が「正座」だった事からもう、取り返しはつかないだろう。言った自分のセリフに吐き気がしそうだ。
「うん、今日は新しい仕事を持ってきたんだ… 」
眼鏡の奥で、先生が仕事モードになっているのが分かった。
(続く)
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弊社は情報を管理する会社である都合上、上記のお話だけに限らずブログ内、全ての「グダグダ小説」は全て「フィクション」です。実在する人物、団体は、私を含むスタッフ以外、すべて架空の物です。弊社で行われた調査とは一切関係ございませんのでご了承のうえお楽しみ戴ければ幸いです!それからお話の途中で設定が「おかしいな??」と、感じる部分があっても所詮「ド素人小説」なのでくれぐれも気になさらないように♡読んで頂く皆様の「想像力」が全てです( ´艸`)
株式会社OTS探偵社
代表取締役 梅木 栄二